ストラディバリウス

このヴァイオリンの名器はその値段とともに謎の部分が多いようだ。以前、NHKか民放だったか忘れたが一流のヴァイオリン奏者を試験台にしてストラディバリウスと国産の物を含めて４〜５台の異なるヴァイオリンの音色の違いをテストした事があった。 一人一人にヴァイオリンの音を聞かせてどれがストラディバリウスでどれが国産のもので、と指定していくのだ。

その結果は・・・。これが意外できっちり正解した奏者はいなかった。それどころか国産の安価なヴァイオリンとストラディバリウスとの区別が付かずに国産のものにストラディバリウスと名指しした演奏家もいた。

これはいったい何なんだろう。一流奏者でさえ区別が付かないヴァイオリンに目の飛び出るような高額な値段が付くというのはどう見ても不思議な感じがする。 世の中にはその違いが分かる人間がいるのか、ひょっとしたら誰も違いは分からずに「裸のオオサマ」みたいにみんながそのように言うから良い音が出るに違いないと思い込んでいるのか（そんな理由だけであれほどの高価格がつくとも思い難いが）。

この傾向は特に日本人に多いような気がする。とにかく物の本質はどうであれ、ブランドが好きだ。男女を問わずブランドに走る。 女性のシャネルを笑えない。男性も乗用車、スーツ、腕時計、ウィスキー、・・・・。 ウィスキーなどは安いと売れなくて、値段を上げると売れるというのだからまったくどうかしている。

実は私も一度、ブランド品のオーダーメードスーツを作った事がある。ところがこれが全然似合わない。 元々、外国人用にできているブランドスーツを骨格の違う日本人が身につけても似合うはず無いと思う。 日本の有名なデザイナーが日本人はオーダーメードを作っても似合わないので、吊るしを着たほうが良いと主張してデザイナー本人も吊るしを愛用しているとの記事を読んだのはその頃だった。それ以来、日本製の吊るしを愛用している。

我が家でも私はあまりブランド品が好きではないので少ないが家族はけっこうブランド品を身に着けている。止めるように言っても「ブランド品の方が耐久性がいいので結局は経済的である｣とか言って聞き入れてもらえない。
話は飛んだがとにかく日本人はブランドが好きだと思う。これは見栄もあるんだろうが物の本質を見極める目を持ってないのでブランドと言う一定の保証を金で買っているのではないだろうか。

大学の時に私の住んでいた下宿にイギリス人の女性がいた。身につけているものは安物ばかりでブランド品なんかは一点も無かったがすごく立派に見えた。彼女にブランドの衣装について尋ねた事があった。その時、彼女はイギリスでは日本のようにブランド品をたくさん持つような事はなく貴族や一部の金持ちが身につけるに過ぎないと言っていた。特に日本の若い女性がブランド品を見に着けている事に疑問を感じていたようだった。 私もブランド品はある程度、年齢を重ねた人が身に着けた方がふさわしいと思う。 日本の若いギャルが身につけていると妙に安っぽく見えるのは私だけだろうか。安アパートに住んでレトルト食品を食べてお出かけはブランドもののスーツでというのは何かおかしいと思うのだが。

多分、今後の日本はデフレの社会に入っていくと思う。そうなるとブランド品はまず買えなくなって個人の鑑識眼によって物の本質を見抜いていかざるを得ないと思う。 デフレは困るがバブルで狂った頭を冷ます時期が必要なのかもしれない。