牛乳への細菌混入

業界最大手の雪印乳業が牛乳の精製において、黄色ブドウ球菌を混入させる事故を起こして９０００人の被害者を出した。定期的に定められているラインの洗浄、消毒を手抜きしていたのが直接的な原因のようだ。このような食品業界において、この部分は最も重要でミスは酷い災害につながる工程だから、そこで手を抜くなんてまったく信じられない話しだ。被害の大きさからしても普通の会社ならまず倒産だろう。
我々の業界で言うと、手術する際にトイレから出たまま手も洗わないで執刀するようなものだから、これはかなり重症だといえよう。

この事件は被害も大きく、例によって会社ぐるみでいろいろ隠匿工作をしているようで、今後さまざまな調査や捜査がなされるだろうが、これは日本全体に蔓延する大きな問題を含んでいると思われる。というのは日本全体が制度疲労を起こしていて、政治、経済、農業などすべての分野でどうしようもないどん詰まり状態にあるように思われてならない。これほど重要な工程で手抜きをすると言うことは、この工程の危険さや重要さを充分理解してないということだし、それを上層部が把握してないということになる。

これはちょうど第二次世界大戦に突き進んで行った日本陸軍のように、頭が極度に硬直して風通しが悪くなった状態でこのような硬直状態が日本の至るところで起こっているような気がする。 政治はまさにそのような状態で２世議員が蔓延して、世襲というだけで訳の分からないお嬢さんでも簡単に当選するし、政治家の汚職や官僚のやりたい放題も延々と続いている。それを変えようとする若い世代の意気込みもまるで感じられない。

経済界もがんじがらめの談合体質がはびこっており、政治家との癒着体質が改まる気配さえない。農業はまるでコバンザメのような補助金依存体質で、どうにかして国から金を取ってくるかということしか関心がないように思われる。今回の選挙のように自民党は農民やゼネコンにしか支持されない党でありながら、未だに政権を取っている。その他、金融、教育、保健、警察すべての分野で制度疲労のどん詰まり状態が蔓延っていて、もうこのままではどうしようもない国に陥ってしまいそうな予感がするが、この国が自力で立ち直って行くのは不可能に思われる。江戸時代末期のように小国であれば可能性もあるのだろうが、なまじ大国になっているので今の制度を変えたくないという勢力があまりに大きすぎる。

これで戦争にでも負けることがあれば、この閉塞状態が一挙に変化する可能性もあるのだろうが、それは本末転倒だし第一これからは日本がそのような戦争に突入する可能性はまずないだろう。ということはこのような状態が際限なく続いていくということなのだろうか。そうして日本が本当にどうしようもない状態に陥って国家が破産するような危機が迫ると、明治維新のように人材が出現してきてこの国を根底から変革して行くのかもしれない。もうそのような僥倖しか期待できないのだろうか。