鄙びた温泉

日本人の温泉好きは昔から有名だが、近年は若者にもこの傾向が強く、人気のある温泉地は老人より若者の方が多く見られるくらいだ。先週末は私の医院の慰安旅行で、脇田温泉に行った。この温泉はほとんどの方はご存知ないと思うが、北九州市と福岡市の間にあり、私のところから車でゆっくり行って５０分くらいで到着するくらいの距離にある。今回、一泊二日の日程で旅行の候補地を迷っていた時に、移動にあまり時間をかけず近場で温泉があってゆっくり出来る所という条件で決まったものだった。

もともと北九州は火山や温泉というものがなく、その分、自然災害は少ないのだが、観光地としてはインパクトに欠ける土地柄だ。私の家族も熊本から来たせいか、温泉がないのが不満のようで時々そのことを口にしていた。今回も温泉が候補地に上がっていたので、近場といっても県外を考えていたのだが、従業員の一人がこの温泉のことを発案してきた。こんな近くに温泉があるのかと驚いたが、他のものも驚いていたところを見ると、あまり知られている温泉ではないようだ。正直に言ってあまり期待できるところには思えなかった。

９月９日、例年使っているマイクロバスの都合がつかず、１２名が車３台に分乗して出発した。旅行の開放感もあり、おしゃべりに夢中になっていると、さすがに近場と言うだけあってすぐに着いた。旅館の総数が７軒くらいの、規模も小さく鄙びた感じのこの温泉は、どちらかというと福岡市のほうに近くそちらからの客が多いようで、我々が到着した時も福岡からの大勢の若者のグループが着いたばかりで、旅館の玄関前に集合していた。部屋に案内されると露天風呂に入ろうということになり、３００メートルくらい離れたところにある露天風呂を目指した。この道はだらだらと続く上り道で、浴衣で行く道としては結構きつい坂だった。

露天風呂に入ってみるとこれががなかなか良くて、宴会までの１時間半くらいをいろいろな種類の露天風呂を移動しながら楽しんだ。やはり近くても温泉は温泉で、この開放感は格別だった。これほど近くに良い温泉があるのに、少なくとも北九州ではあまり知られてない。その理由としては規模が大きくないというのと、雲仙、別府といった超弩級の温泉地が隣接した県にあり、そちらが目立ちすぎているからなのか？　どちらにせよ、まだまだ、自分達の住んでいる地域の周辺について、あまり知らないものだと思い知らされた。

宴会の後はカラオケと麻雀をして過ごし、温泉での休息とレジャーを充分に楽しんだ。振り返って見ると、やはり移動に時間がかからなかったので、ずいぶん楽な旅行であった。自宅に帰ってからもゴルフの練習に行くほどに体力も残っていて、これは例年の旅行では考えられないことだった。旅行もただ単に遠くに行くというより、近くても質の良いプランを考えるべきだと再認識したような今回の旅だった。

回数を重ねて我々の医院の旅行もマンネリ化してきたので、皆さんの中でもしお勧めのプランがある方はお知らせ下さい。