朝鮮民族のこと

北朝鮮の金正日の息子と思われる男が、不法入国を企てたとして税関に身柄を拘束され、公式には正体不明のまま中国に国外退去させられた。この処置にはいろいろ非難もあるだろうが、今の日本では妥当な処置だと言えるだろう。それにしても国民が食事にさえ困るほどの生活苦に喘いでいるときに、ブランドのもののバッグを持って呑気にディズニーランドに遊びに来るとはいったいどんな指導者なのかと呆れてしまう。

私が小さかった頃、親父が話してくれた金日成は敵である日本軍の兵隊でさえ尊敬するほどの高潔な人物だったようだ。彼は貧弱な装備でもゲリラ戦術で勇敢に戦って、親父の話では彼の軍隊が相手のときは日本軍はとても嫌がったそうだ。ところがそのような高潔な人物でも自分の子供のことになると一人の親ばかになってしまうようで、いろいろな屁理屈をつけて金正日を自分の後継者にしてしまった。

いろいろ危惧されていた正日は案の定と言うか、ラングーン事件などを起こして世界の平和に重大な不安定要素を投げかけている。その息子の正男はあの正日が心配するほどの放蕩息子らしく、ギャンブルなどで悪い風評が立っている。この国の先行きを考えると、このような指導者を戴いていて、一体どの方向に進んでいくのだろうか、先行き心配な点が目立つ。

ところで韓国については、今の若者たちは我々の世代と比べるとまるで違ったイメージを持っているようだ。私の育った場合は下関という一種独特の地域だったせいもあると思うが、一般的には朝鮮系の人々にかなり偏見をもっている者が多かった。小学校から高校までそれはかなり激しいものだった。そんな状況で人口の１割は朝鮮系の人々だったから、いろいろ衝突も多かった。

わたしの母親などは誰からも好かれて、また決して人の悪口を言うことのない人だったが、そんな彼女でも朝鮮系の人とはあまり付き合わないほうが良いと言うくらいだった。青臭い正義感に燃えていた私はそのような雰囲気に反発を感じたものだった。それで思い出すのは私が医者になりたての頃、ある病院で経験した一件だ。

その日、私は大学病院での仕事を終えて、ある病院のバイト（夜の当直）に行った。その夜は入院患者に特に問題もなく、風呂に入った後、当直日誌を書いて寝ようと思った。そこで当直日誌を開いたら高校時代の同級生の名前が目に入った。彼も同じ大学に進学していて、時々一緒に飲んだりしていた。その彼が同じ病院に内科医として当直にきていたのだ。どんなことを書いているのかなと彼の日誌を読んだ私は強烈なショックを受けた。

そこには日頃のユーモアあふれた彼からは想像も出来ない厳しい抗議の文面があった。それは「私が風呂に入った後は汚いとか部屋が臭いという噂が立っているらしいが、私は毎日風呂にも入っているし、そのような事を言われる筋合いはない！」といったものだった。実際のところ、彼は長身、ハンサムで着ているものも当時の学生にしては上品なものだった。まったく変なうわさを流される謂れはないのだが、その彼が韓国系だった。恥ずかしい話だが、その当時は医者仲間でもそのような偏見を持って、いい加減なことを言う者がいた。

ところが今春、大学に入学したうちの長女などは、高校の頃から韓国の高校生と電子メールで文通したり、音楽の配信をしてもらったりしていて何の偏見もない。韓国のミュージック・スターやタレントのファンにもなっているようだ。私が育った頃は韓国の女性との結婚話などが持ち上がるとそれこそ親族会議などで大騒ぎになるような状態だったが、長女などにはそんなことはまるで理解できない話のようだ。

このような社会変化は我々の学生の頃はまったく期待できないものだったが、世代が変わっただけで大きい変化を成し遂げたものだ。やはり人間は世代が変わらないと思考経路や習慣は変わっていかないものらしい。