デマ

雅子様が内親王を御出産されて、世間ではその話題で持ちきりだ。不景気な世の中もこれで活気が生まれ、良いほうに変化していく可能性もあり非常にお目出度い事だ。それにしても今回、驚いたのは出産までに数々のデマが乱れ飛んだ事だ。私もそのうちのいくつかを聞いたが、余りにもデマが酷すぎる感じを受けた。最も酷かったのは雅子様の子供は男子に決まっていると言うものだった。これを口にしていた者はかなり多かった。

この噂は雑誌などでも目にしたが、私の周囲の医者も何人か確信を持って口にしていた。中にはある程度責任のある地位にいる産婦人科医も、「今回の妊娠は人工授精で、男子を産むように計画されているから男子なのは１００％間違いない」と断言していた。また、ある医師は「産婦人科医師の間では今回は男子が生まれるのは常識になっている」とも言っていた。マスコミ周辺でもこの情報が多かったらしく、出産後に取材後話として披露されていた。と言うことは、日本中でこの手の噂が蔓延していた可能性が強い。これは何も今回に限らないが、どうして皇室に関してはデマの類が多いのだろう。

雅子様の妊娠以外にも、皇太子の嗜好や皇太子兄弟の血筋など確信を持って、まことしやかな情報を発する人がいる。ほとんどが間違った情報のようだが、それを否定するとその話を持ってきた人間はいかにその情報が正しいかを延々と力説するので、そのまま聞き流すようにしてきた。日本人は皇室についての話題には強い興味を示すし、それだけにデマも流布しやすいのだろうが、それだけで理解できるような浅い問題でもないような気がする。

と言うのは、日頃は常識もあり流言蜚語には全く興味を示さない先輩や友人が、この問題については途端にミーハーになってしまうようで、不思議でならない。どうみても疑わしい話を真顔で力説してくる。しかも、こういう話をする時は大体共通点があって、いかにも自分で見てきたような感じで話すか、またはこの話は常識になっているというような言い方をする。今回の出産についても同じような状態だった。

考えてみれば、皇室も戦前と比べるとかなり民主化されてきて、神格化された天皇ではないのだが、それでも皇室に関してはタブーや情報公開の十分で内面があるのだろう。その辺りが、こういう変なデマが流れたり、常識家が妙な情報を無邪気に信じたりする根源になっているのだろうか？　どちらにせよ、余り良い事ではないだろう。欧米のようにもっと開かれた皇室になるのを目指すべきで、天皇の世継ぎも男子に限定するのは２１世紀のこの時代では相応しくないと思う。

最後に今回の件で受けた教訓として、皇室に関する話題の９割はデマと思われ、次にまたそのような話が出てきたときには話半分どころか「話し一分」に受け取って、余り相手にしないように対処したほうが良いと思う。その時、こういう類のデマを持って来るのは普段いい加減な者だけでなく、日頃信頼に足る人物でも噂を運んでくる可能性があるという事も頭の隅に入れておく必要があるだろう。