クローン人間

先週、イタリア人の医師によって、クローン人間の胎児が既に妊娠しているという報道が飛び込んできた！　遂にここまできたかというのが実感だ。クローン羊「ドリー」の誕生以来、いつかは人間もクローンが出来る危険性は予測されていた。しかし、それには心理的にも相当大きな障壁が存在してそう簡単には実現しないだろうと思っていたが、予想より驚異的に速い経過になった。クローン人間の作製に成功するというのは医学の分野ではある種のエポックになり、名声か悪名かは別にして後世に名が残ることは間違いないだろう。しかし、今の段階でクローン人間を作るというのはクローン人間自体の善悪は別にしても、責任感のある人間のする技とはとても思えない。

先行している動物でのクローン作製でも、奇形や病気また寿命が短いなどあまりに異常が多い事が判明している。動物より複雑な人間において、これらの異常が出現しないとは誰にも断定できない今の時点で、クローン人間の実現を目指すとは全く功名心に目の眩んだ非道な仕業と言わざるを得ない。このまま妊娠が進んでクローン人間が生まれた場合、異常が見つかる可能性は動物の例から推察してかなり高いと思われる。それははっきり目に付く奇形か発育する過程で分かる病気なのか、いずれにしろ重篤な異常が見つかった場合は、この医師は生まれてきた人間に対してどのように責任をとるつもりなのだろうか？　と言うより、このような重大な結果の責任など取れるはずもなく、異常が判明した場合は安易に中絶でもするつもりなのだろう。まったく、行き当たりばったりの計画でクローン一番乗りを目指しているとしか考えられない。

もちろん、普通の妊娠でも異常が見つかることはあるが、クローンでの異常はドリーの例でも分かるようにそれまでの報告にないような異常が目に付く。染色体のより複雑な人間の場合は、どんな異常が発生するか予測がつかないのが現状だろう。酷い奇形が発生する可能性もあるし、心臓などの重要臓器に異常が発生して生命の危機に見舞われ病院に入院したままの状態になるかもしれない。寿命が極端に短い可能性もある。それらの危険性に目をつぶって、敢えてクローン操作を挙行するのはどう考えてもまともな科学者ではないだろう。

以上の主張はクローン人間自体の善悪には言及してないが、根本的にはクローン人間自体が大きな問題だと思う。人間の誕生という神の領域に一歩でも足を踏み込んだが最後、後はまったく歯止めが利かなくなるだろう。それは今までの科学の進歩や発展の歴史を見てみると明らかだ。私は人間のクローン作製は決してやってはいけない操作だと思う。それは単に人工授精をするのと違って、自然界では決して起こる筈のない自己の複製を作る訳だから、自然の摂理にも反している。

科学技術は放置しておくと際限なく進化、発達していくものと思うが、自然科学においては決して踏み込んではならないという禁断の領域があると思う。核兵器やクローン技術がそれらに該当すると思うが、これらは一歩間違うと短期間に人類の滅亡まで進んでしまう危険性がある。その意味で、クローン禁止法案を早急に世界的なレベルで決定する必要があると思う。それも今すぐ成立に取り掛かる必要があり、遅れると世界中で歯止めは利かなくなってしまうだろう。