ワールドカップ

ついにW杯が始まった。韓国ほどではないようだが、日本でも相当盛り上がっている。それにしても昨日のベルギー戦を引き分けたのは、日本としては大成功ではないだろうか？　マスコミも含めてあまりに日本の勝利をアピールしていたので、裏目に出たときの反動を少々危惧していたが、結果的には実力以上の成績を出せたと思う。ロシアも強豪だし大変だが、今後もこの調子で予選リーグを突破して欲しいものだ。

前回のコラムを書いた後、ある大学の研究者から投書があり疑問が解決したことがある。それはヨハン・クライフの件だ。今も盛んにスーパー・スターと言う言葉が使われるが、それは今から３０年近く前のワールド・カップの際に、オランダのサッカー・プレーヤーのヨハン・クライフについて使われだしたのが最初ではないだろうか、と言うのが私の意見だった。これはこれで総体的に間違いではなかったようだが、昔からいろいろな世界でスーパースターと称されても不思議でない人がいたはずなのに、どうしてクライフが最初なのかという疑問が残っていた。そのコラムを読んだある方からメールが来た。

実はその数年前に「ジーザス・クライスト　スーパースター」という斬新なミュージカル映画が評判になっていたが、ジーザス・クライストのイニシャル「Y.C.」とヨハン・クライフのイニシャル「Y.C.」が同じというところに引っ掛けて「ヨハン・クライフ　スーパースター」と言われるようになったということだった。この映画は私も高校生の時に見ていて、音楽も素晴らしく映画にも感動したが、スーパースターという言葉の起源がこの映画のキリストだったとは不覚にも思い及ばなかった。

もうひとつ、オフサイドについて。これも今回のW杯で面白い説に出会った。これまでオフサイドについては紳士の国イギリスにおいて「待ち伏せ的な戦法は受け入れられない」からという説明が主なものだったように思う。確かに、ゴールポスト近くにいる味方にボールを蹴り出してゴールを狙うのは待ち伏せ的な要素があるかな？という気もするが、それならそれで、そのような攻撃を防ぐ戦法を考えればよい訳だし、イマイチ説得力に欠ける思いがしていた。

ところが先週、今までとは違ったユニークな説明が新聞に載っていた。それは「オフサイドとは点が入り難くするためにわざわざ作ったルールだ」というものだ。これは非常に分かりやすく、納得しやすい説明だ。どういうことかと言うと、古来、サッカーはイギリスの町のお祭りとしてなされてきた。それはどちらかのチームが１点をとった時点でサッカーどころかお祭りも終了してしまう訳で、出来るだけ点が入らないようにしないと折角のお祭りが短時間に終わってしまうことになる。そこで手を使ってはいけないというルールやオフサイドを作って、出来るだけ点が入り難いようにしてお祭りを続けるようにした。これはかなり説得力があると思うが、それなら別にオフサイドを作らなくても、５点取ったほうが勝ちというルールを作ったほうが良いような気もするが・・・・・。

アメリカでサッカーがそれほど盛んにならないのは、たぶんオフサイドのせいじゃないだろうかと思っている。以前も書き込んだように、私の個人的な趣向からはオフサイドなしでドンドン点をとったほうが面白いと思う。しかし、そうなると多分ドリブルの価値も下がってくるだろうし、今までのサッカーとはかなり違ったスポーツになってしまう可能性が高い。それほどサッカーにおけるオフサイドの比重は高いとも言えるのかも知れない。

それにしても、これほど巨大な組織でありながらFIFAのいい加減さはあまりに酷い。大勢がチケットを購入できずにいるのに、日本では一試合あたり１万人の空席が出ているし、韓国でもかなりの空席が目立つ。これはFIFAのブラッダー会長と繋がりのあるバイロム社が販売権を持ちながら、売り切れなかったために起こった事態のようだ。そもそもこのバイロム社はメキシコ人兄弟の経営による小さな会社だが、毎度かなり評判が悪い。今回も、予約済みのチケットが印刷の遅れで本人の手に届かずに、現地で受け渡しになるという不祥事を引き起こしている。ところで、韓国では空席分を直ぐに販売して埋めたのに、日本ではチケット購入希望者が山ほど居ながら日本対ベルギー戦でも空席をそのままにして試合をしている（関係者用の席が7,000席あったので、これは空席ではないと屁にもならない言い訳をしているが）。これは臨機応変に対応できない日本病の典型的な現れだろう。まったく、日本がどうしようもないほど社会硬直をきたしている証拠だ。

最後に一寸気になるのは、日本は今回のW杯の開催権を獲得する時に、確かバーチャル・サッカースタジアムを作るという公約を掲げていたように思うが、あれはどうなったんだろうか？　今、至る所に巨大スクリーンによる観戦が行なわれているが、バーチャルスタジアムは全然目にしない。それについてのコメントも聞くことはないが、皆忘れてしまったのだろうか？