拉致問題の結末

遂に昨日、小泉首相が北朝鮮を訪れて、金正日と両国間の懸案を話し合った。もちろん、日本側の要求は北朝鮮により拉致された日本人の情報提供がメインだった。これには今まで拉致などしてないと言い続けてきた北朝鮮が嘘を認めないとならないので、かなり難しい問題を含んでいた。そういうことで相当困難な交渉になることは予想されたが、どうにか拉致の被害者の消息が分かり無事に日本に帰れることを日本中が願っていた。

また北朝鮮としては、経済的に困窮して喉から手が出るほど日本の援助が欲しいだろうし、イラクの制裁に絡んで是非ともアメリカとの窓口を閉ざしたくないだろう。そのためには日本と交渉の道を開いていた方がいろいろな意味で便利なはずで、今回はさすがの金正日も木で鼻を括ったような下手な対応はしてこないというのが一般的な意見だった。そしてその予測どおりに北朝鮮側は拉致被害者１３人の消息を発表した。

ところが、その内容は驚愕するものだった。このような無残な結果になるとは日本人は誰も想像してなかったのではないだろうか。北朝鮮に拉致されていた日本人が８人既に死亡しており、５人だけが生存を確認された。日常よくマスコミなどで報道されていた方は全員死亡していた。横田めぐみさんや有本恵子さん、有本さんと一緒に住んでいた石岡さん、北朝鮮工作員に拉致されたことが韓国の裁判で明らかにされた原さん、また大韓航空機爆破事件の際の李恩恵とみられる田口八重子さんなどだ。今まで２０年以上も生存を期待していたご家族の心中はいかばかりだろう。

この会談自体は世界中のマスコミの論評を見ても、かなり成功だとの評価を得ているようだ。世界的に見れば、北朝鮮を世界の交渉のテーブルに引きずり出して、核疑惑などの解決の糸口を開いたということで評価するのだろう。これは当然で、その意味で世界的な和平戦略としては、今回の交渉は成功なのだろう。ただし、日本にとっては拉致問題が大きく存在しており、事はそう簡単ではない。それが３０〜４０歳台の８人が死亡していたという報告を受けて「ああ、そうですか」と納得できるものではないだろう。

そもそも死亡を報告されたのは、北朝鮮を脱出してきた者が情報をもたらした人や手紙などで北朝鮮にいることが判明して、日本のマスコミで問題になっていた人ばかりというのが明らかに不自然だ。しかもあの青壮年期の日本人がこんなにバタバタ死亡する事は病気や災害を持ち出しても到底説明できるものではないだろう。もしそうなら北朝鮮の国民も６割は死亡するくらいの災害や疫病が蔓延していたということになる。こんなバカな事はないので、やはり本当に８人の方が死亡しているとすれば、不自然な力が働いたとしか考えられない。

北朝鮮は政治犯の収容所、公開処刑、粛清など政権に都合の悪いものを処理するシステムを持っていると報じられている。口封じのためには処刑するくらいは平気なのだろうか。ひょっとすると、死亡していたといわれた８人も収容所に閉じ込められている可能性がない訳ではないと思う。今後も粘り強く北朝鮮に拉致の目的や経過、死亡の原因など詳細を調査することを要求する必要があるだろう。今のままではとてもご家族や国民の納得は得られないと思われる。やはり北朝鮮は一筋縄ではいかない国なのだろう。