北朝鮮とイラク

以前から指摘されていた北朝鮮の核疑惑だが、１９９４年の米朝枠組み合意に反して核開発を進めている事を、あっさりと北朝鮮自身が認めてしまった。何をするか分からないあの国で、核を保持していることは周辺国には大きな脅威となる。この辺りはアメリカにはそれほど切実な感じはないようで、あの超タカ派のブッシュでさえイラクに比べると対話重視などと呑気なことを言っている。勿論、核カードは蜂の一刺しと同じで、使った瞬間にアメリカや日本、韓国によりボコボコにされて自身の破滅に通じる事態になるのは明白だし、結局、使うぞと見せかけて脅しの外交カードとして使うしか出来ない訳だが、相手が北朝鮮ということが問題だ。

大韓航空機爆破事件、ラングーン事件のように何をしでかすか分からない国だけに、まったく世界の常識が通用しない面がある。それに「窮鼠猫を噛む」の例えのごとく、極限の飢え等で国の体制が持たなくなると、ぶち切れて「ええい、どうにでもなれ！」と世界を道連れにして核戦争に巻き込んでしまおうという考えが浮かばないとも言い切れない。指導者がとんでもない人物だけに、いくら注意しても注意しすぎることはないと思われる。ミサイルが飛んでくる対象国としては韓国と日本が最も可能性が高いだろう。アメリカは当事者だが、あまりに遠すぎてさすがにアメリカにミサイルをぶち込むのは不可能だろうから。

アメリカはイラクに全精力を注ぎ込んでいるのだろうが、北朝鮮に関しては意外と寛大なように見える。国連の核査察受け入れを表明していて、しかも核を持っている可能性は低いイラクに対して執拗に武力行使を目論むのに反して、確実に核を保持している北朝鮮に対して武力行使の可能性を始めから除外しているのはどうも解せない。やはり遠いアジアの事は実際には関心が薄いのだろうか。それとも実際に核を持ってしまった国については、一転して弱腰外交で対処するということだろうか？　それだと北朝鮮の「崖っぷち外交」の思う壺なのだが・・・。

アメリカはイラクが過去にクウェートへ侵略した事を理由に、イラクへの軍事力行使を正当化しようとしているが、それを言うなら北朝鮮はイラクなど問題にならないほどテロ行為を数多く行っている。大韓航空機事件やラングーン事件はもとより拉致監禁、韓国や日本への工作員の潜入事件など数え切れないほどだ。とにかく、核兵器については米朝枠組み合意を無視して保持したことを曖昧にしておくと、取り返しの付かないことになるという認識はしっかり持っておかないとならないだろう。

場合によっては、来週から始まる日朝国交正常化交渉の席でも、核開発を断念することを確約しないと今後いっさい交渉も援助もしないと断言するくらいでないといけない。ただし、その場合に問題になるのが拉致被害者だ。彼等はちょうどその頃北朝鮮に戻っているはずで、彼等が人質として利用される可能性がある。最悪の場合は、そのまま日本に帰国できなくなって危害を加えられる危険性も出てくる。 そこまで行かなくても、今回の核問題は今後の日朝交渉にも大きな影響をもたらすだろうし、延いては今回帰国してない残りの拉致被害者の生存にも影響が出てくるかもしれない。

戦後今までの長い間、及び腰外交でお茶を濁して来た日本も、この問題については絶対に軟弱な対応は避けなければならない。核兵器を廃棄しないと、交渉も中止し資金援助もしないという原則を強調する必要があるだろう。そうでないと、北朝鮮の国民を助けようとして援助した資金が、核開発に使われるという可能性が高くなる。間違っても、日本に飛んでくるミサイルの開発費を日本が提供するという馬鹿げた事態だけは避けなければならない。既にミサイルの照準は日本に向けられていることが報道されている・・・・。