万景峰号

今日のニュースで北朝鮮の万景峰号のことを報じていた。これは日本と北朝鮮を結ぶ唯一の連絡船で、定期的に日朝間を往復している。この船にはいろいろな問題が提示されていて、元朝鮮総連幹部が指摘しているようにこの船自体が北朝鮮の工作船で、覚せい剤や北朝鮮への地下での送金疑惑も指摘されている。これらの疑惑が真実かどうかは今のところ確たる証拠はないが、実は問題はこの船の税関の検査があまりに緩すぎたことにある。そもそも北朝鮮とは国交もない訳だから、国交のある他の国より厳密にする必要があるはずだ。ところがニュースなどで見る限り、書類のチェックだけでほとんどフリーパスに近い状態のようだ。これは以前、厳格に税関業務を実施したところ、朝鮮総連の猛烈な抵抗に遭って、なし崩しに今のルーズな状態になってしまった経緯がある。

これは一つの例だが、ここに日本の法律を施行する上での根本的な問題があらわれていると思う。日本では法律を決めたらそれを公平にしっかり運用していくという姿勢が不足しているように思われる。相手によって法律の適応をさじ加減しないで、万人に公平に法律を適応させないと、その本来持っている意味がなくなっていくと思う。権力を持っている者や声の大きい者、関係者だからという理由で法を犯したものに法律を適応しないのであれば、誰も法を守ろうとしなくなるだろう。

以前、自民党の金丸代議士の脱税問題が露呈した時に、捜査があまりに軽い罰金のみで終了したために日本中に怒りの渦が発生した事があった。日頃、羊のように大人しい日本人にしては珍しい騒動だったが、それほど時の最大権力者に対して甘い処分だった。これはその後、処分のやり直しになり代議士も辞職したと記憶しているが、このように警察も検察も政治家には弱い面があると思う。また声の大きい者には警察も役人も及び腰になる面がある。朝鮮総連や暴力団など騒がれると厄介だと見られる組織には腰が引けた対応をしがちだ。朝鮮総連については怒らせると五月蝿いというのと過去の歴史上の負い目もあって、どうも役人も苦手なようだ。今話題になっている拉致問題も朝鮮総連がでっち上げだと言い張るので、証拠がありながら結局今まで追求しないできた経緯がある。

また暴力団などが競売物件の家屋などを不法占拠して、落札した物件を持ち主が使えないという現象がかなり多く見られる。このために良好な物件に競売で参加者がつかないことがあるが、これなども法律を厳密に運用すれば解決できる問題だろう。ところが暴力団などが五月蝿いために、不法占拠をそのまま放置しているケースが多い。全国で、こうして暴力団の資金源になっていく物件は相当多いのではないだろうか。

しかし、このように法律の運用にさじ加減を用いていると、公平さが失われて順法精神に大きな影響をもたらす弊害が懸念される。ほとんどの在日朝鮮人は拉致など知らないでいたと思われるが、一部の朝鮮総連の幹部は明らかに拉致を知りながら北朝鮮の片棒を担いできたと報じられている。これからは総連がどんなに強弁をしても法律どおりに対処する気概が必要だろう。やはり日本に住んでいる以上は皆に公平に法律を適応させないと、法律自体がどんなに素晴らしいものでも良い結果はもたらさないだろう。日本人の事なかれ主義や紛争を好まない性格が、この点では悪い方に作用していると思われる。物事の解決に於いて杓子定規に対処することは一般的には非難されるが、こと法律に関しては杓子定規に運用することが最も重要だろう。