ワクチン不足！
　

今年もインフルエンザワクチンの接種時期がやって来たが、昨年のＳＡＲＳ騒動のせいか今年は全国的にワクチン接種の希望者が多いようだ。わが医院でも昨年は１００人分用意していたが割と早い時期になくなってしまったので、今年は２００人分用意してこの時期に備えていた。 昨年までの経験からすると、私の医院では ＳＡＲＳなどの諸事情を考慮しても２００人分あると不足することはますないと思っていた。ところがいざ接種を始めてみると予想を上回る接種希望者が殺到して、今現在既に在庫はゼロになってしまった。

これはどう考えても不思議なことで、ちょっと理解不可能な現象だ。昨年、インフルエンザワクチンの不足が話題になったが、そのため政府は今年、昨年より４割増産を決めた。そして計画通りにワクチンが生産された。これだけ増産すると余剰分が出て当たり前で、間違っても不足することはないはずだった。ところが１１月１日にワクチン接種が始まると間もなくワクチンの不足が報道され始め 、１２月に入ると全国の３７県で不足している状態に陥っている。

私の医院でもワクチンの在庫があれば融通して欲しいという要望の電話が他の医院や問屋から連日かかってきている。もう既に私の周辺の医療機関でもほとんど在庫ゼロの状態のようだ。 私の医院であっという間にワクチンが終了したのも、他の医院でワクチンがなくなったので在庫のある医院を求めて希望者が殺到した結果だろう。ニュースによるとこれは北九州市だけの現象ではなく、日本全国的同様な状況のようだ。昨年より４割も増産して、それでもこの状況になっているのは明らかにワクチンの偏在が原因だろう。

分りやすく言えば、この日本からワクチンがなくなった訳ではなく、誰か（どこか）が抱え込んでいる事になる。今最も疑われているのは大病院だ。そもそも我が医院のような零細な施設でさえ数百人分のワクチンを用意している訳で、大病院は数千人分の備えを持っているところもある。このような施設では問屋との力関係もあり、今年のように不足する可能性のある場合初めから余るのを承知で過剰な在庫を抱える傾向にある。しかも悪いことにインフルエンザワクチンは 何時でも返品が可能だ。極端な話、１万人分のワクチンを仕入れてその内５千人分接種して、残りの５千人分はシーズンが終わる春になって返品すれば良い。結局、この５千人分のワクチンは有効利用されないで廃棄されることになる。 もちろん、この分だけワクチン不足で接種を受けられなかった被害者が出てくるのだが・・・・。

こんなことをしていてはワクチンをいくら増産しても足りないだろう。人命に関わることにもかかわらず、人の迷惑顧みず金儲けに走るのはまったく情けない話だが、これが日本の医療機関の一面 を表しているのも事実だ。もちろん総ての医療機関がこんな品のない行為をしている訳ではなく一部に限られるのだろうが 、それにしても今回ワクチンが全国的に不足しているということは極少数の医療機関の仕業だけではないだろう。 情けない話だが、これはある面で現在の医療機関の置かれている苦しい状況を反映しているのかもしれない。