ダブルスタンダード

昨年からアメリカのダブルスタンダードがますます酷くなってきているような気がする。最近のニュースを見ていても、イラク戦争やＢＳＥ問題などでのアメリカの発言にはあまりにも自分に都合の良い論理が多すぎると思う。今回、アメリカは日本に牛肉の輸入再開を強く求めてきているが、そもそも２〜３年前に日本で狂牛病が発生した時にはアメリカは真っ先に日本からの牛の輸入を禁止した。そして日本が全頭検査という世界で最も厳重な検査体制を実施した現在でも輸入禁止は続いている。ところがアメリカは狂牛病の牛の追跡が出来ずに検査の放棄をしたにもかかわらず、「 ほとんど問題ないだろう」という程度の認識で日本に輸入再開を迫っている。これが逆だったら日本は袋叩きにあっているだろうと思われるくらいだ。

イラク戦争の大義はイラクの大量破壊兵器だったが、結局これはそもそも存在しなかったという所に落ち着きそうだ。挙句の果て、ブッシュ大統領は「フセインは大量破壊兵器を作る能力があったので攻め入った」と開き直る有り様だ。ＢＳＥでは対象の牛の消息を見失って一部しか検査できなかったのに、 検査の結果存在を確認できなかったので「なかった」と結論付け、イラク問題では大量破壊兵器を発見出来なかったのに、兵器の存在を完全には否定できないので「ある可能性がある」と結論付けている。

どちらも検査の範囲では見つかってないという点では同じことなのだが、ＢＳＥでは「居なかった」、大量破壊兵器では「存在の可能性がある」とまったく違った結論を導き出している。これは酷いダブルスタンダードでこれほどの都合の良い使い分けは今までお目にかかったことがないほどだ。これほど自分に都合の良いように論理を使い分けて世界を説得しようとしても普通なら上手く行く筈はないのだが、これがアメリカという現代で唯一の超大国がすることなのでそのまま受け入れられる可能性もある。まったく頭に来る話で 、こんなことならアメリカとの付き合いを止めれば良いと言う気にもなるが、これがそうはいかないのが頭の痛いところだ。

北朝鮮問題などは特にそうで、他の国々は次回の６カ国協議で日本が拉致問題を持ち出さないように圧力をかけるなか、アメリカだけは拉致問題を議題に出すことを支持すると日本の肩を持ってくれる。こうなると 小泉首相でなくともアメリカが他の問題で少々無茶を言っても縋っていこうという気になるのは致し方ないのかもしれない。本当はドイツやフランスのように毅然とした態度を取って欲しいのだが、そうするとアメリカは 日本に対し北朝鮮問題で冷たい態度をとるのは目に見えているし・・・・・。

最近、日本の国益ということがしばしば話題に上るが、「アメリカの金魚の糞になることが国益だ！」と主張する政治家が少なからず居る。プライドも何もないまったく情けない政治屋たちだが、それでは 「それより確実に優れているという代案を 差し出せ」と言われて答えに窮する面がある。プライドを捨ててこのような安易な道を辿ると確かに安全かも知れないが、世界中がアメリカの金魚の糞に成り下がるのはどう考えても正常な状態ではないと思う。それにもかかわらず世界は次第にその方に進みつつあるのかも知れない。