マスターズ

遂に今年もオーガスタ･ナショナルカントリークラブで行なわれるマスターズ・ゴルフトーナメントの季節がやって来た。毎年、この大会が来ると冬も終わってゴルフシーズンに突入したという実感がわいてくる。私の場合は２２歳からこのゴルフの祭典を見てきているが、毎年２月くらいになると この大会が待ち遠しくて４月になるのを心待ちにしている。ゴルフの世界ではメジャー大会と呼ばれる４大大会があり、その大会には世界中から選りすぐりのスター選手が大挙して押し寄せる。このメジャーはゴルファーなら誰でも興味あるので視聴率も高くマスコミも挙って取り上げるが、このマスターズはそのなかでも別格の存在だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

その理由を考えると、一にも二にも試合会場であるオーガスタ･ナショナルの美しさにあると思う。深緑の芝生をバックにツツジの赤や真っ白なマグノリアの花が咲き乱れたコースには思わず息を呑む美しさがある。又他のゴルフ場と違ってラフという芝生を伸ばしたエリアがなくて総て短く刈りそろえている。この人工的な美しさに溢れたコースは全英オープンが開催される荒涼としたリンクスコースの自然美とは対極をなすもので、それぞれ違った趣きの味わいがある。

スコットランドのセントアンドリュースのような寒風吹きすさぶリンクスコースでセーターやウィンドブレーカーを着てプレーするゴルフも自然との対決という意味では捨てがたい魅力があるという。マニアックな人なら確かにそういうストイックなゴルフにはそれなりの面白さを感じることはあると思う。しかし同じゴルフをするならポロシャツ一枚で春の陽気の下、美しい花々に囲まれてプレーするゴルフに勝るものはないのではないだろうか。テレビで垣間見る人工美の極致ともいえるオーガスタは世界のゴルファーの憧れの的で、誰もが一度はプレーすることを夢見るだろうがこれはほとんどの人には叶わない夢で終わる。

これはプレーするための条件が厳しいためで、このクラブの会員か会員の紹介した人しかプレーできない。例えアメリカの有名人といえどもこの規定を充たさないとプレーできないし、 ましてや日本人がプレーするとなるとほとんど不可能に近い。それにこれは少々話しが外れるが、このコースは女性はプレーが許されていない。当然、女性のメンバーは居ない。これは世の男女同権主義者の標的になっていて、昨年などは危うく大会の開催が危ぶまれるという所までに至った。これなどはカントリークラブの規約の問題で、私的なクラブが女性を入会させようがさせまいが問題にする方がおかしいと思うが、今の世の中はどうもそうではないらしい。 これなどは日本の相撲協会が土俵上に大阪府知事を上げないことを非難されているのと似かよっている。この２つの組織はいずれ女性にも解放せざるを得ない運命にあるのではないだろうか。

この大会は今年もタイガー･ウッズを中心に展開されることになると思う。と言うのは、この試合はロングヒッターに有利なように設定されているためだ。このオーガスタはラフがないために飛ばせば飛ばすほど有利に試合を進めることができる。あとの三つのメジャー大会はラフが深く、飛ばすことより出来るだけフェアウェーから第２打を打つことが求められる。いくら飛ばしてもラフに入れると次のショットが極端に難しくなってくるからだ。その点オーガスタは少々ドライバーが曲がっても深いラフというのがないので、とにかく飛ばしてショートアイアンで真上からボールを落とした方がピンに近づけることが出来る。歴代の優勝者を見てもジャック・ニクラウス、トム･ワトソン、セベリアーノ･バレステロスなどのロング･ヒッターが複数回の優勝を飾っている。

そのように楽しみなマスターズだが、遂に明日から始まるという時を迎えた。日本からも丸山、伊沢の２人が参加することになっている。世界中の一流選手が目標にしているこの競技で優勝というのはかなり難しいことだが、２人には出来るだけ上位に進んで欲しい。 オーガスタでのプレーは無理でも、現役でゴルフをプレーしているうちに一度はこのジョージア州オーガスタの地を観戦に訪れたいものだ。今年も月曜日の朝まで寝不足の日が続くことになる。