韓流

ここ１〜２年の 韓国のドラマやその出演俳優の人気が凄まじい。いわゆるヨン様など四天王だが、それぞれ日本女性の中で人気はうなぎ登りのようだ。私の周囲でも例外ではなく結構韓国のドラマが話題になることが多い。当地でもウィークデイの午前中に連続ドラマが放送されていて、診察の暇な時に 断片的に見ていたらこれが結構面白くてビデオに撮ってまで見るようになった。最近、日本のドラマは面白いと思ったこともなくほとんど見ないが、韓国のドラマは一度見出すと止められない感じだ。私の周囲でも同じような感想を良く聞く。これはどうしたことだろう。

その理由を考えてみると、いくつか思いつくことがある。それはドラマのパターンがはっきりしていて判りやすい。ヒーロー、ヒロインはあくまで美男美女で性格も非常に良く、少々意地悪をされたくらいでは反撃に出ることもなく我慢し続ける。それに対して悪役は徹底的に冷たく性格は陰険で、これでもかこれでもかというほど主人公を痛めつける。日本のドラマのように複雑な役柄の出演者はあまり居ないし、ニヒルな主役も居ない。そして限度まで忍耐を強いられたヒーローは最後に大逆転のホームランをぶっ飛ばして物語は終わる。これは良く考えると力道山のパフォーマンスと同じだ。力道山も朝鮮半島の出身者だが、 ひょっとしたら生まれながらにしてこういう感覚を身に付けていたのかもしれない。

ストーリーも非常に単純で分かりやすく、最後にはこうなるなと推測がつくものが多いがそれでも引き込まれてしまう。これは一つには俳優の喜怒哀楽がメリハリがついていて、思いっきり演じることが日ごろ日本のドラマを見ている者にとって新鮮なせいもあるのではないだろうか。涙も半端じゃなく出てくるし日本人とは国民性の違い なのか感情を表現する方法がだいぶ異なっていると思う。日本では少々気恥ずかしいほどの大量の涙などがあちらでは当たり前のようだ。 怒りを感じた時の感情の表現も日本人ではあまりお目にかかれないほど激しい。

それにしてもこういう韓流人気は我々の育った時代にはちょっと想像も出来なかったことで、当時を知る我々には隔世の感がある。先日も同級生とこの事について話したが、我々の時代までは韓国系（ほとんどが在日朝鮮人だが）の 人々は差別と冷たい視線の元で日本人と接してきたものだった。小学校や中学校でも在日朝鮮人と分かるだけで露骨なイジメに会ったりするので、多くは日本名で高校までを過ごしたものだった。もしくは 本来の名前で朝鮮学校に進学するかのどちらかだった。そして大学に入った段階で本来の超鮮名に戻って行くケースが多かった。私も熊本大学に入学した時はほんの数ヶ月前まで日本名だったクラスメートが 、入学式では聞いたこともないような名前に変化していたので驚いた経験がある。

これまで 日本と韓国の関係も良好とはいえない状態が続いていた。と言うのも、戦前に日本が行った暴挙を考える韓国国民の嫌悪感は当然だろうが、それに対して日本は未だに「韓国併合は韓国側からの希望だった」と強弁する政治家が居るぐらいだから反省がない。 先日、韓国のニュースキャスターが大リーグの松井秀樹を紹介しながら、「日本人なので素直に喜べないが、アジアからも優秀な選手がメジャーに行って活躍している」とコメントしていた。それが韓国国民の日本に対する素直な感情なのだろう。しかしそれも最近はかなり変化してきているようで、今のような国民レベルの文化交流をこのまま続けていけば、次第に国レベルの関係も良い方に向かってい くのではないだろうか。