旧交

先週末に出身医局の同門会ゴルフコンペがあり久しぶりに熊本まで車を飛ばした。最近は車で長距離を走るのが億劫になりＪＲを使うようにしているが、今回はゴルフのスタートが朝早くて送り迎えを頼むことが躊躇われたので仕方なく車にした。以前、高速道路上で居眠りをして事故ったことがあったので、土曜日は昼で仕事を終えて１時間くらい昼寝をしてから３時すぎから自宅を出た。 高速道路での長時間の運転はやはり退屈で、睡魔が襲ってこないかと心配したが昼寝のせいか居眠りすることもなく５時過ぎには無事熊本に着いた。

今では熊本には年に一度くらいしか行かないので、行く度に懐かしい。町並みも我々の居た頃と比べてかなり変化している。その夜は同級生と一杯やったが、やはり旧友は懐かしいものだ。お互いの家庭や仕事の悩み、愚痴を何の気遣いもなく発散できるのは同級生 が一番だろう。年齢も近いし家族構成も似たようなものなので興味のある話題が共通している。何より昔の自分自身を完全に知られているので、今更なんの気遣いも無用だ。

みんなゴルフが趣味の人間ばかりだったが、ゴルフの話が出尽くすと一転して「冬のソナタ」の話題が場を盛り上げた。これは一人が日本の中年女性がヨン様に熱を上げているのを揶揄 する発言をしたのが発端で、それに対して「あの中年女性達の気持ちは良く判る気がする」と言う者が一斉に発言しだした。テレビのニュースなどで見るペ・ヨンジュンはにやけてパッとしないが、ドラマで見るヨン様は低音で迫力があるしカッコイイというのだ。

実は私もそれと同意見だ。昨年末にＮＨＫのＢＳで１０日間連続で放映があったが、その初回を家族と一緒に見た私は一気に嵌まり込んでしまった。結局、その１０日間は夜１０時から１２時３０分まで欠かさず見て感動してしまった。ストーリー、音楽、キャストどれをとっても素晴らしい。このドラマに嵌まり込んでいるのは中年が多いようなので、やはり年齢的に我々の同世代もこのドラマに共感する素地を持っているのだろうか。

我々の世代はまだ朝鮮系の人々に対する偏見を持ってる者が結構多くて、特に私の育った下関市（人口の１０％が朝鮮系）ではそのような面が強かった。それは戦後６０年を経てもまだわだかまりがないとは言えないような状態で、両民族が本当に親密になるのはほとんど不可能じゃないかと思っていた。ところがそんな雰囲気を立った一本のドラマが一気に吹き飛ばした 感がある。日本女性が熱狂的にラブコールを送っているのを韓国でも好感を持っているらしく、日本人に対する悪感情もかなり払拭されつつあるということだ。映画の力とはなんと大きなものなのだろうか。

そういう話題に大いに盛り上がっていくうちに一同限度を超えた飲み方をしたらしく、私も気が付いたら翌朝ホテルで服も着替えずに寝ていて危なくコンペに遅刻するところだった。どうにかギリギリ 間にあったが、二日酔いの頭を抱えこんで異常に冷え込んだコースの一番ホールをスタートしていった私は最悪のラウンドを体験することになった。途中の茶店で何度か嘔吐しながら、「昨夜はあんなに飲むんじゃなかった」と後悔しながらのラウンドを終えて、 疲れた体に鞭打ってどうにか北九州に帰り着いた。