アニカとステロイド

現在、アメリカの女子ゴルフ界で連戦連勝、他のプロを問題にしないで圧倒的な強さを誇っているのがアニカ・ソレンスタム選手だ。この選手の強いところは単に技術的に優れているだけでなく、男子並みの 体躯、体力を持ち合わせていることだ。それは強靭な身体能力の持ち主が多数揃っているアメリカ男子ツアーに参加して互角の戦いをしているのを見ても判るとおりに、これはちょっと女性のスポーツ選手という感じの 体格ではない。飛距離にしても他の女性プロとは明らかに別次元のものだ。簡単に言えば女子プロの中に一人男子プロが入って戦っているとでも言ったら良いであろうか。

ところが１０年くらい前だろうか、彼女がプロとして我々の目の前に現れた時はまったく違った印象だった。まるで女子学生のような可憐でスレンダーなスタイルとファッションでむしろアイドル的な雰囲気を放っていた。当時から優秀なゴルファーだったが、今のように圧倒的な飛距離もなく参加するたびに優勝していくなんてことはなかった。それが４〜５年のうちに太い腕と脚が目立ち始めたと思ったらまるで別人のような体躯を見せるようになってきた。

ここまで書いてくると、勘の鋭い方はある疑念が持ち上がるかもしれない。そうステロイド疑惑だ。いくら筋トレに励んだといっても彼女の上半身の筋肉の隆起は異常だ。アメリカ男子 ゴルフツアーの昨年の賞金王ビジェイ・シンも全米一の練習量を誇り筋トレにも誰よりも長い時間励んでいるが、それでもソレンスタムのような筋肉の盛り上がりは見られない。

今アメリカの野球界ではプロもアマもステロイド疑惑に揺れている。アマチュアも一流選手は半数近くがステロイドで筋肉増強に勤しんでいるという。ある一流選手は息子には野球選手になって欲しくないと言う。その理由は「ある時期になると息子は生命の危険を冒してステロイドを使うかレギュラーを諦めるかの選択に迫られるだろう」というものだ。現に 大学野球の一流選手がステロイドの副作用で何人も死んでいる。 プロ球界はもっと酷い状態だ。ステロイドで水増しされたボンズやマグワイヤーのホームランはベーブ・ルースなどと同列に評価すべきでないとの意見も多い。

フローレンス・ジョイナーを初めステロイドを使ったスーパースターが何人も突然死しているが、日本のマスコミは彼らに対してどうも甘い 、それどころか何度も日本に招いてスター待遇でテレビ番組に登場させている。今のところソレンスタムについてステロイド疑惑を非難しているマスコミや評論家は居なくて、私一人がここで勝手に叫んでいるに過ぎないのだが私は絶対的にそう信じ込んでいる。

その根拠の１つはステロイド使用者は絶頂期に 競技を止めようとすることだ。苦労して世界のトップに立ったアスリートがその頂点で突然その競技を止めて引退しようとする共通点がある。ジョイナーもそうだし複数のオリンピック ・ゴールドメダリストも疑惑が周辺に及ぶ雰囲気が漂い始めるや否やすぐさま引退を表明する。その後の経済的社会的大成功を失うデメリットとステロイド使用の事実が暴露されることによって蒙る損失や不名誉を天秤にかけてのことだろう。

今回、私がソレンスタムに疑惑の目を向けたのは上半身の異常な筋肉の盛り上がりを目にしたのが切っ掛けだが、昨年ソレンスタムがインタビューで引退を口にしたことも大きい。ほとんどのマスコミはスーパースターの一人勝ち絶頂期での 引退発言を冗談のように捕らえているが、私はこれはある種の本音だと思っている。多分周辺にステロイド使用の疑惑追及の臭いを嗅ぎ取ったのではないだろうか？　スリムだったアスリートが短期間に筋骨隆々になりあっという間にトップに登りつめその状態のまま引退宣言をする。この ルートを歩んだ者は１００％ステロイドで造られたチャンピョン と思ってよい。最後に私がこのように彼女のことを扱き下ろすのは、自分が男のくせに逆立ちしても飛距離でもスコアでも彼女に敵わないからという妬みからではないことだけは強調しておきたい 、絶対にそんなことは・・・・。