ビートルズ

私がまだ中学生の頃、ビートルズの全盛時代で彼らを中心にポップスの分野ではさまざまなグループが活躍していた。そして既に半分神話化されていたビートルズにまつわる話はそれこそ無数にあり、学校 での友人たちとの会話でもやはりビートルズが話題の中心になっていた。ビートルズにはいくつか不思議な点があり、ドラマーがデビュー直前に代わったこと はその最たるものだったろう。既にリバプールでは一流のグループだったビートルズのドラマーが世界デビュー直前に代わったことについては当時色々な話があったが、どれもいまいち納得のいかないものだった。

それが先週、ＮＨＫのＢＳでその抜けていったドラマーのピート・ベストや当時の関係者が証言する形で放送があった。それは初めリバプールの５人の若者でビートルズを結成し、ハンブルグなどで実力を磨いてい きメンバー交代などを経て最終的に１９６２年「ラブミードゥ｣で４人のビートルズとして世界デビューするまでを２時間にまとめた番組だった。

これは多くの関係者にインタビューして、当時はあまり明かされなかった事実が多く紹介されていて非常に興味深い番組だった。ハンブルグ時代に地元の女性と恋に落ちてメンバーの一人が抜けたり、初めは 場末のクラブでも前座扱いだったビートルズが次第に人気が出てハンブルグでも一番のクラブで演奏できるようになっていく過程などは始めて聞く話だった。

中でもピート・ベストがリンゴ・スターに代わる時の逸話はやはり最高に驚きだった。我々がその当時聞いていたのはピート・ベストのドラムのテクニックが下手で華がなかったのでリンゴスターに変えたというものだったが、やはりこれは嘘だった。当時の関係者も口を揃えて証言していたが、結成以来、ビートルズで一番人気のあったのがピートベストでドラムのテクニックも一流だったとのことだった。

それではどうして直前にリンゴ・スターに代わることになったのかというと、ビートルズを世界的に売り出した敏腕マネージャーのブライアン・エプスタインと ビートルズ結成以来マネージャー役をしていたピート・ベストの母親との確執が大きかったようだ。それにもう１つはピート・ベストに対するほかのメンバーの嫉妬もあった様だ。 また「ラブミードゥ｣のレコーディング・ディレクターがピート・ベストを好まなかったのも原因の１つだったようだ。

その後、 ピート・ベストは僅か１年くらいでビートルズが世界の頂点に駆け上るのを横目に見ながら、リバプール市役所の職員として２０年間ひっそりと働いて現在に至っている。そして当時の脱退劇がかなりしこりを残していると思われるのは 、現在でもポールなどのビートルズのメンバーとピート・ベストがけっして遭うことがないということだ。ちょっとした事で世界のビートルズになれずにリバプール市職員になってしまった男の悲しい話だったが、ピート・ベストが自分の人生を達観していたのが唯一の救いだった。