Ｘbox

年末に知人から大前研一の新著『私はこうして発想する』を頂いたので正月はこれを読んで過ごしたが、今回も今までのように予期せぬ新発見がいくつもあった。彼の洞察力には何時も驚かされる が、今回は国際政治、経済、領土問題などで驚嘆に値するで意見が紹介されていた。なかでも目を引いたのはゲーム機に関しての記事だった。それはマイクロソフトのＸｂｏｘ についてだが、これは次のような理由でソニーのプレステ３を駆逐して、ゲーム機の分野でＸｂｏｘの独壇場になるのとの予測がなされていた。

このＸｂｏｘだがプレステ３とは通信機能とパソコンとの融和性の点で大きく相違点がある。この二つのライバル機はゲーム機としてはゲームソフトの問題もあり、今の段階で優劣をつけるのはそれ程簡単ではないだろう。ただしゲーム機を離れた通信機能を有するテレビ付属機としては明らかにＸｂｏｘに軍配が上がるようだ。これはＸｂｏｘではパソコンにダウンロードした映画や写真を家庭のテレビで見ることが可能なのがプレステ３と違う。

つまり大前氏はＸｂｏｘが怖いのは単なるゲーム機の顔をしてその実態はテレビスクリーンのコントローラーである点を指摘していて、それにソニーの人間も気づいていないことを危惧している。結局、ゲーム機としてだけではなく、家庭の居間にあるテレビがパソコンとＸｂｏｘを介して映画館になったり、これでＤＶＤを見たり 電子アルバムになったりすることになる。

それに対してプレステ３はプレステ２の性能を進化させたものとして発表したが、これはあまり意味のないもののようだ。と言うのは既にプレステ２で画質はかなりの水準に達していたので、これをさらに進化させてもよほど大画面でない限りその違いが分からない。分かりやすい比喩が紹介されていたが、 「泥んこ道を走るためにフェラーリを用意して、さらにそれにより大きなエンジンを積み込もうとしている｣とのこと。つまり進むべき方向が間違っているわけで、これでは次世代ゲーム機戦争に負けてもしょうがないだろう。

ソニーはプレステ２とウォークマンの２つの柱で利益を上げてきたのだが、ウォークマンがアップルのi-Podにコテンパンにやられ今回プレステ２の後継機がまたもやＸｂｏｘに負けるようだとソニーの屋台骨が傾くのは必至だろう。トヨタと並んで日本が世界に誇る超優良企業ソニーだがテレビ部門では既に韓国のサムスン電子に負けているし、パソコンを含めた会社全体でもサムスンの後塵を拝するのは時間の問題 と言われている。 非常に寂しいことだが、日本とＩＭＦ管理を脱した韓国の勢いの差を感じさせる象徴的な出来事ではないだろうか。

この本にはその他にも中国や韓国、北朝鮮問題、教育問題、少子化問題など非常に興味深い提言がいくつも投げかけられていて、それらが総て驚嘆するほどの洞察力に満ちている。 彼は地価の８０％下落を初めとしてバブル崩壊を日本中が浮かれていた頃に予言していて、彼の提言に耳を傾けていたら甚大な被害を受ける人間も大幅に減っていただろうと思う。何時もながら その精密な分析力を基にした提言には感嘆するばかりで、これほどの人物が居ながら何故に日本は今までに失われた１０年を過ごさなければならなかったのか不思議でありかつ残念でならない。