道徳とマナー

昨朝、歩いて通勤していたら、ボトンと音がしてミニバンから何かが投げ捨てられた。それは私の１０メートルくらい先の道で、そこまで歩いて投げ捨てられた物体を見ると、何とそれはビニールに包まれたゴミと空き缶だった。その場所はゴミを集めるところではなく、車道に面した普通の歩道だった。この住宅街は 著名な建築家により街全体が計画的に造られたニュータウンで、よく掃除されて整然とした歩道には全く似つかわしくない汚れたゴミの塊だった。

その瞬間は唖然としたが、その後起こった事態を把握すると猛烈に腹が立ってきた。この張本人は若い女性でビニール袋を投げ捨てるとすぐに走り去って 、あっという間に視界から消え去った。車で通勤していたら追っかけていって捕まえるところだが、何しろ歩きだからどうしようもない。 それにしてもこのような女性が将来子供を育てるのかと思うと暗然たる気持ちになって来る。その子供は 多分、この母親と同じようなマナーや道徳心しか持たないように育っていく可能性が高いと思うが・・・・・。

最近、日本人のマナーや公衆道徳がなってないと言われることが多い。この日の光景はまさにそれを表しているのだろうか。彼女たちの家や庭はいったいどうなっているのだろうと思う。多分ゴミだらけの汚い住宅に住んでいるのだろうと思うが、ひょっとすると自分たちはまともな家に居て、 自分の家の周辺以外にゴミを捨てて他が汚れようが全く気にしない自己中心的な人間なのかもしれない。

そう言えばここ数日間、日本人のマナーの悪さを報道するニュースがやけに多いのに気が付く。海水浴客で賑わう海岸で水上バイクを暴走させたり、河川敷でのバーベキューでは飲酒の上での乱痴気騒ぎや大量のゴミ放置。また若者の深夜の花火打ち上げを取り上げていたがこれも酷かった。深夜から酷い例では朝方まで花火の大きな音と嬌声のために近くの住民は睡眠が妨害され、何度も注意するが改善されないと言う。警察に頼んでもこれを取り締まる条例がない自治体が多く、野放し の状態だ。 これなども他の人がどれ程迷惑に思っているのか想像できないジコチュウ人間のなせる業だろう。

それにしても日本人のマナーや道徳がこれ程乱れてきた原因はいったいどこにあるのだろう。そもそも日本人はこの面では世界でも賞賛を浴びるくらい素晴らしい感覚を持っていたはずだ。それは江戸時代や明治時代に日本を訪れた外国人の残している 文章を見ればすぐに分かる。そこには「世界中見ても、日本人ほど清潔で謙譲の精神を持ち、また他人を思いやる国民を見たことがない」といった趣旨の記述が山ほど見られる。

それが短期間にこんなににも変わり果てたのは、日本社会における宗教観のなさと戦後の日教組による道徳教育の拒絶が大きいのではないだろうか？　現代日本ではお葬式と法事くらいしか宗教儀式に接しないのではない か。結婚式もあるがこれはキリスト教の儀式をペッタリと貼り付けただけだし、日常で宗教の教義を聞く機会はほとんどないに等しい。どんな宗教（カルト以外）でも良いと思うが、やはり宗教は ある意味で社会生活の重要な部分を担っていると思う。「誰も見てなければ万引きをする、ゴミを放り捨てる」ではなく、「誰も見てなくても神様が見ている」という観念は大事なことだと思う。

また先の戦争への反省からだろうが、日教組は学校での道徳教育に嫌悪感を示して不必要に道徳教育を排除してきた。私は今の日本人の極端な社会性の欠如などはこの日教組姿勢に大きな責任があると思う 。日教組自体はもうすっかり力を失って影響力も地に落ちているが、これは取り返しのつかない過ちを６０年も続けてきたことになるのではないだろうか。道徳は人が社会生活を送る 上での規範として子供のうちにしっかり教え込まないと 、「法律に引っかからなければ何をしても良い」という日本人がどんどん増殖していくことだろう。そうなると法律もどんどん厳しいものとなり、それは住みにくい社会になっていくことに繋がり、自分でおのれの首を絞めることになる。兎に角、日本人のマナーの悪さについてはそろそろ真剣に対策を考える時期に来ているのではないだろうか。