核実験

「 遂にやったか！」というのが大方の思いだろう。一昨日、国際的な世論に 抗うように北朝鮮が核実験を行った。先日のミサイル発射実験と重ね合わせると、これで核弾頭に搭載できるくらい小型化さえ出来れば （と言ってもこれはそれ程簡単ではないが） 、核ミサイルで日本を攻撃することが可能になったことになる。これでいよいよ日本やアメリカは北朝鮮に手出しが出来にくくなったわけで、アメリカは核を持ってないイラク で火遊びしている間に北朝鮮がここまで核武装する時間的猶予を与えたことになる。

ただしプルトニウム型の核爆弾は爆縮などの高等な技術が必要なので実験が必要不可欠だが、ウラン型では実験はなしで核爆弾として使うことは可能だ。つまり長崎に落ちた原子爆弾はプルトニウム型なので実験が必要 だったが、広島型は実験を省いて原子爆弾を製造できることになる。それでもあれ程の甚大な被害を与えることが出来るわけで、北朝鮮も本気で秘密裏に核爆弾を持とうと思うのなら何も世界中に衝撃を与えるような今回の実験は不必要だったわけだ。まして北朝鮮はウラン型の原爆は既に保有しているものと思われ ている。

つまり北朝鮮としては核兵器を持つというより世界中に核保有国として認知してもらうことが第一目標だったのだろう。これは核を持ってないと見破られたイラクが大量破壊兵器保有などと因縁をつけられてアメリカにボコボコニされたのに対して、核保有を表明したパキスタン やインドなどはアメリカがことのほか丁重に扱うことからして金正日は是非とも核保有国として認知されることを目指したものだろう。

残念ながらこれは現実のものとなりつつあり、一旦核保有国の仲間入りをするとアメリカといえども容易に手出しを出来ない。アメリカが北を攻撃するとまず日本などの同盟国に核ミサイルが 飛んでくる可能性が高いからだ。これがイラクとの違いで、イラクの時もイスラエルにスカッドミサイルが飛んできたが、これは通常兵器なので普通の空襲となんら変わらなかったが、核弾頭を搭載ということになると話はまったく別だ。これは想像を絶する被害をもたらすことになる。

こうなると道は２つしか残されていないと思う。アメリカがこれまでの主張を引っ込めて北朝鮮と二カ国協議を行うか、従来の主張を通して北朝鮮包囲網を形成して核廃棄させるかだろう。ただし後者の場合は次第に制裁を強めていくことになるので、北はミサイルをある段階でぶっ放す危険性があり日本や韓国は万が一の場合の覚悟が必要だろう。前者の場合はアメリカのメンツを潰すことになり、そう 簡単にはアメリカはこの策をとりにくいだろう。

結局、核兵器に関しては「早い者勝ち」といった事態になり、どんな凶悪な国家でも核を持ったら最後 全くお手上げという最悪の結果になりそうだ。しかしそれでは今後イランだけでなくベネズエラなどの反米国家に対して悪い前例を残すことになる。だからといって北に強い制裁を加えると・・・・・・・。

何とも後味の悪い今回の核実験だし、その解決には途方もなく難しい道筋が待っていることだろう。唯一の光明は今回の爆発があまりに規模が小さくて、ひょっとすると実験が失敗に終わったかＴＮＴなど通常爆弾だけのダミー実験だった可能性が浮かび上がってきている点だが・・・・・・・。