アパ・グループ

私は 以前から日本のマスコミに関して不信感を抱いているが、このアパグループの問題についてのマスコミの態度にはどうも理解しがたいことが多すぎる。昨年１０月にイーホームズの藤田東吾元社長がアパグループの ホテルやマンションの耐震偽装を告発していたが、監督官庁などが注目することなくまたマスコミも無視に近い形で放置して来た。ところが先週になって藤田社長の行っていることが事実だと判明した。京都にある２つのアパホテルが耐震偽装されて いた事実が公表されたからだ。 アパグループについては全国展開されているが、この２つだけでなく他のマンションなどでも偽装が暴かれつつある。

このアパグループは安倍首相と深い関係にあり、社長の夫である元谷外志雄代表は安倍首相の有力後援会（安晋会 ）の副会長であり、記者会見で分厚い化粧が流れ落ちるほどの大泣きをした元谷芙美子社長も 自分の主催する「ワインの会」での首相とのツーショット写真を雑誌に掲載されている。またご丁寧にもこのアパグループの後援会長は 派閥のボス森喜郎だ。

そういう繋がりのせいか、藤田社長が国土交通省にアパの偽装を告発しても担当課長からは迷惑がられて、もう偽装の話を持ってくるなとさえ言われる始末。また官邸に直訴しても文字通り玄関払いされている。これではアパグループの偽装隠しに官邸や官僚が関与したと疑われても仕方ないだろう。

ところがこれで一斉に大問題に発展するかと思いきや、やはりほとんどのマスコミ（特に東京のキーテレビ局）は未だに関心を示さずに無視に近い形だ。アニータや宮崎のそのまんま東などには 不必要なほど興味をしめすものの、この件に対しては不思議なほど無関心を装っている。本来なら社会悪に鋭く突っ込むはずのニュース番組のキャスターも同様だ、腰が引けているというより無関心を装っている、妙な話だ （ＴＢＳには疑惑の資料さえ渡しているのだが）。

ひょっとすると昨年の段階であまり取り上げなかったので、今更かっこ悪くて取り上げない姿勢を続けているのかもしれない。 それとも建築業界からの広告料がなくなることを恐れたのか。まさか政界からマスコミに大きな圧力がかかっていて 、そのためにニュースで取り上げないなんてことはないだろうが・・・。国会の野党の姿勢にも腑に落ちない点がある。この問題は柳沢厚相の失言問題など 比べ物にならない程の重大事件だと思うが、これも前の武部幹事長の件で失態を演じた後遺症で二の足を踏んでいるのだろうか、あまり追求されているのを目にしない。

それにしてもイーホームズの藤田東吾元社長の言っていることが次第に真実だと判明しつつあるのは不気味なことだ。彼は自分の逮捕はアパグループの偽装隠しのためであり、偽装とは直接関係の無い別件逮捕だと言っていた。初めは私も苦し紛れの嘘つき放題かなと思っていたが、こうなってはそれもまんざら嘘でなく国土交通省の官僚と官邸が仕組んだ仕業なのかなと疑いたくなってくる。

また彼は一連の耐震偽装問題は簡単に偽装できる構造計算プログラムを作成した国土交通省とその天下り団体である日本建築センターに責任があることを指摘しているが、これもどうやら真実味を帯びつつあるようだ。 官僚たちは自分たちの責任を回避するために、姉歯や藤田社長などに責任を押し付けてそちらに世間の注目を導いた疑惑さえ感じられる。

また彼の証言が真実なら、アパは１年も前からこの偽装を知っていたにも拘らず政治家を使っての偽装隠しに終始し、どうにも逃げられなくなって 、「今日はじめて知ったんです！」とあの記者会見を演じたことになる。アパのど派手な社長の大泣きだが、どうして被害者である社長があんなに泣くのかと思っていた疑問もそれだと納得できる（つまり偽装隠しを隠すための芝居 ？）。

Ｐ.Ｓ.  私はまだ読んでいないが藤田社長が出した著作『月に響く笛　耐震偽装』はこのあたりの事情だけでなく、日本の建築界と政治家の腐った繋がりなどが実名を挙げて網羅されているというから興味のある方は御一読されたらどうでしょうか。 これもある種の圧力がかかったとみられ文芸春秋社が直前に発刊を中止した結果自費出版になっている。