４０人の傍観者

昨日、テレビニュースの事件報道を見ていて椅子から転げ落ちるほど驚いた。特急列車の中で若い女性が男に絡まれて、挙句の果てにはトイレに連れ込まれてレイプされたという。しかもその車両には４０人もの乗客が居て、車掌さえ巡回していたのだ。この暴行は２時間にもわたっておこなわれて、その間誰も止めに行くこともなく通報さえもなされなかった。こんな事が現代社会で考えられるだろうか。

この事件を聞いて、この４０人の乗客が情けないとか正義感が欠如していると非難するのは簡単だが、この事件は日本人の本質に関わる深刻さを内包しているような気がする。多分、このような状況の出来事は日本以外のほかの国ではまず起こらないのではないだろうか。 ９．１１ 同時多発テロの時のユナイテッド機の乗客のように、団結して凶悪な乗っ取り犯に立ち向かうことは無理にしても誰かが通報くらいはするだろう。

日本は昔から最も安全な国だと言われてきたが、それは日本人の特性に拠っていると思う。つまり日本人はこの島国の地理的要素か人種的要素か分からないが、世界でも稀なる穏やかな性格の民族だと思う。それは社会のいろいろな場面で窺われる。どんなに政治家や官僚が腹立たしい事件を起こしてもそれで暴動になることもなく、今ではデモさえもなかなか起きない状況だ。外国で日本のような 不祥事があればデモは当たり前で暴動さえ頻発するのではないだろうか。

暴動の多い欧米やラテン社会だけでなく、アジアにおいても中国や韓国でも何かあると日本のように平穏ではなく、過激なデモなど頻発している。結局、穏やかで争い事を好まない日本民族のなせる業なのか、 日本では何があっても民衆が荒れることはほとんどない社会なのだ。そういう一見優れていると思われる特質がこのような事件に遭遇してマイナス面に働くのではないだろうか。 談合などもそういう争い事を好まない負の面が現れたものだろう。

日本の社会では権力を持っているものには逆らわないとか、強そうな男のやっていることは見てみぬ振りをしようとの考えが前面に立つようだ。「長いものには巻かれよ！」とか「君子危うきに近寄らず！」など格言もこのような行動を支持するものが多い。

この穏やかな国民性は世界的に見て優れた資質だと思うが、やはり局面によっては怒ったり毅然と立ち うことが必要な時もあるのだと頭に入れておくことは重要ではないだろうか。この４０人はその犯人に絡まれることもなくこの場は安全に乗り切っただろうが、後で後悔の念に苛まれることはなかっただろうか？　少なくとも家族には自分がその場に居たことは言えなかっただろう。自分がその場に居たらどうしていたか 、自問してみると難しい問題ではあるが通報くらいは出来たような気がするが・・・・・。