映画四作

三女の大学入学により ４月から子供全員が皆一人暮らしをするようになり、家には夫婦二人きりになった。そういうこともあり食後に一息入れた後シネコンに行く機会が増えてきて、 この一ヶ月間は週に一回のペースで映画を見た。この一カ月間では「ブラッド・ダイアモンド」、「クィーン」、「スパイダーマン３」、「バベル」の４作を見たことになる。この４つの映画はそれぞれ趣の違った作品だったが 、いろいろな意味で含蓄のある映画だった。

ブラッド・ダイアモンドはアフリカの貧困地帯におけるダイヤモンド採掘に絡む壮絶な現実を描いている。この映画を見ていると、この２１世紀の社会においても如何に先進国がアフリカなどの開発途上国を搾取しているかが分かる。いつまで経っても最貧国は搾取され続け、先進国セレブのご婦人の身体を飾るために 人間が命まで落とす状況は変わらないのかと絶望的になる。「ダイヤ、ダイヤ」と宝石に目の色を変える女性には是非一度見て欲しい映画だ。

クィーンはイギリスのエリザベス女王とブレア首相の関係をダイアナ妃の死を絡めて描いた作品だが、これは素晴らしい映画で今年のアカデミー主演女優賞を獲得したのも当然だと思う。主演の女優がエリザベス女王に良く似ていて品のある演技も良かったが、ブレア首相が始めは女王をあまり快く思ってない状態から次第に引かれていく心理が絶妙に 描かれていた。何事にも派手なアメリカと違って、イギリス王室の山野で質素なアウトドアライフを楽しむ情景も日本人には親近感 が湧くのではないだろうか。好みもあるが私としてはお勧めの作品だ。

スパイダーマン３はシリーズ３作目にして始めて見たが、これが意外に良かった。何が良かったかというと主演男優のアメリカ人らしからぬ所と言うか、体も華奢で少々恥ずかしがり屋っぽいところが妙に親近感を感じて良かった。マッチョなスーパーヒーローが大活躍するストーリーだと先入観を持っていたのだが、実際はナイーブな若者の青春期における苦悩や恋愛が上手く描かれていて なかなかの出来だった。

バベル、多分これは言葉による意思伝達の限界を描こうと意図したのかと思うが、イマイチ表現したいことが分からなかった。この４作の中では一番期待するところが大きかったのだが、前の三作と比べるとイマイチの感は拭えなかった。これでは初めからドリーム・ガールとは勝負にならなかっただろう。 やはり評判や予告編ではその映画の本当の価値は判断できないと再認識したこの四作だった。