コムスン報道

現在、コムスンが袋叩きの状態で、折口会長が何を言っても「介護の世界で利益を考えるやつは口出し無用！」という感じだ。世間では折口会長は極悪非道の企業家で、コムスンは長所など一点もない介護企業だとの認識だ。だが果たして本当にそうだろうか？　 確かにコムスンのやった不正請求は許されないことだし、その後の会長の対応も非常にまずいものだった。しかしどうもこの一連の報道においては日本のマスコミの大きな問題点が表われている気がする。

そもそも 現在の介護法の元では利益が出にくいようになっている。「介護で利益を出そうなんて、どだい間違っている！」とマスコミは目を吊り上げるかもしれないが、企業がこの道に踏み込もうとする時に利益が出ないとわかっていて手を出すはずがないし、もしそんな事をすればその企業や従業員に対する裏切り 行為だろう。

マスコミは今はコムスン憎しで、彼が何を言っても「介護で利益を狙うとは何事だ！」という論調だが、そもそもこの介護法案が出来た時には国でやるべき介護を企業に代わってやって貰うとの狙いだった。これは厚生省がお墨付きを与えて私的企業に介護を担ってもらう制度を作ったわけだから、当然ある程度の利益は出ることを 前提として広報していた。

テレビ報道では厚生省の官僚は「当然のことながら介護業では利益は出ないものです」と能天気なことを言っているが、これは全く酷い答弁だと言わざるを得ない。これではまるで「こっちの瓶には蜜がありそうですよ」と誘っておきながら、虫が入り込んできたら蓋を閉めて「そこには甘いものはないよ！」と言っているようなものだ。おまけにただでさえ厳しい現状 で今年から介護料の値下げ をしているから、介護に手を出している企業には泣きっ面に蜂状態だろう。

コムスンが意外とあっさりと手を引いたのは、そのあたりの先行き真っ暗な介護業界に見切りを付けたと言う面もあると思う。今はワタミにしろニチイ学館にしろマスコミは救世主のような扱いをしているが、これも実態を全く判ってないと思う。ニチイはコムスンと同じで査察を受けて不正請求を指摘されているし、ワタミにしても完全な利益追求企業でコムスンと五十歩百歩だと思う。寧ろワタミは利益の出にくい訪問看護は初めから拒絶しているから、考え方によってはコムスンよりもっと利益追求の姿勢が明らかだと言えなくもない。

コムスンの場合は他が手を出したがらない重度身障者の介護や２４時間介護なども手がけていて、コムスンがないと困る利用者も多く居たという一面もある。ニチイにしろワタミにしろそういう人々には手を出さないと公言しているから、行政は今後どう考えているのか、ビジョンはあるのだろうか。少なくともマスコミはその辺りの事は何も考えてないことだけは明らかだが・・・・。

私的企業に介護事業を任せる以上、厚生省は実際に介護を行なっている末端のスタッフまで報酬が十分得られるようなシステムを作ることが重要で、マスコミもその点を追求する必要があると思う。このままではコムスンからニチイやワタミに役者が変わっただけで不正請求が続く現実は何も変化がないということになりかねない。