チベット！

北京五輪聖火リレーへの激しい妨害がパリやロンドン、サンフランシスコで巻き起こっている。五輪においてこんなことは今まで一度もなく、またニュースを見ていると反対運動を行なっているのはチベット族というよりも西欧の人間が多いようだ。これはチベットにおける中国の人権弾圧が如何に世界中で反感をかっているのかを表していると思う。

そもそも古来からの独立国であったチベットを清国が武力で併合し、その後中華人民共和国建国後に軍隊を送って強制的に自治領にした経緯がある。その経過やその後に数々の暴挙や民族浄化といっても いい程のチベット族１２０万人の虐殺を繰り返して、文化的にも中国の文化を押し付けてほとんどチベットとしての尊厳を踏みにじった統治を行なってきた。 現在、聖火リレーに対する妨害行動は今までの中国のチベットに対しての数々の残虐な統治にたいする積り積もった怨念の表出だろうが、人権に敏感なヨーロッパには当然の如く理解されてもアジア特に中国ではチベット人による単なる暴力としてしか受け止められないようだ。

と言うのは、私の周囲にも中国人の知人が何名か居るが、彼らの会話を聞いていると思わずひっくり返るような意見しか出てこない。彼等は皆大学を出てそれなりのインテリジェンスを備えた知識人で、中国が絡んだ政治問題以外では全くの常識人なのだ。それがまるで中国政府の宣伝マンかと間違うほど、この問題に於いては世界の知識とずれている。

それも日本に来て１〜２年しか経っておらず、情報操作の強い中国政府のマインドコントロールにどっぷり嵌まり込んでいる者でなく、既に１０年以上も日本で生活していてグローバルな情報もたっぷり接することが出来るはずなのにこの有様だ。これはいったいどういう訳だろう。戦前の日本でも軍部のマインドコントロールで一億総愚民化し、 「アメリカ相手に絶対に勝てるし、戦況が苦しくなっても神風が吹く 」と信じきっていた人間は多かった。しかし海外に出ていた日本人はアメリカ相手に戦争を始めるとは正気の沙汰ではないと理解していたと言われている。

それなのにこの日本に長期間住んでいる中国人は一体何なんだろう。中国政府のマインドコントロールはそれ程永く続くのだろうか？　中国がチベットに対して行なってきた残虐行為は全く耳に入ってないのだろうか？　そうだとしても世界中でこれ程の デモやヨーロッパ各国首脳のオリンピック開会式不参加表明が続くのかを考えると、中国政府の言っていることがどうも怪しいという事は少しは判りそうなものだと思うが・・・・。

しかも彼等のダライラマに対する評価を聞くとこれまたブッ魂消るとしか言いようがない。このノーベル平和賞を授与した平和運動家をまるで悪魔の化身のように言うのだ。この悪魔が中国オリンピックを妨害するために聖火リレーの妨害を指示している様に思っているらしい。また中国国内ではリレーの妨害をするのではなく、言いたいことがあれば中国内で正々堂々と言えば良いなどと主張しているが、そんな事をすれば警察によって何処かへ連れ去られて命の危険さえ生じるのは火を見るより明らかだ。

ダライラマは今回でも北京オリンピック開催は支持しており、聖火リレー妨害には何度も反対を呼びかけている。今回の騒動もチベット 側がこの平和的な指導者でなければ、どこまで酷い暴動になっていたか判らないほどだ。中国国内に居ると情報が極端に制限されるので致し方ないとしても、少なくとも海外に住んでいる中国人はどうしてこれほどまでに世界中でチベット支持の運動が強く惹起されるのかを今一度考える必要があるだろう。ただ７０〜８０年前にこれと同じようなことを中国人に対して行なってきた日本人にそんな事は言われたくないと反撃されそうだが・・・・。