風呂がない？

三重県伊賀市の 整形外科医院で点滴の作り置をしていて、その点滴ボトルのなかで増えたセラチア菌により死亡事故が起きた件で、先日その渦中の医師のインタビューがあった。この医師は「作り置きは私は知らないことで、看護師が勝手にやったことなんで看護師に聞いてください｣と笑いながら喋っていた。

これを聞いて私は強い違和感を覚えた。この規模の個人医院で医師が知らないままこういう作業がなされることはまずないし、万が一この医師が知らないとしても管理責任は総てこの医師にある訳だから、死亡事故になったこの院内感染の事件でこのインタ ビューでの態度は全く無責任極まりない。

と思っていたら、次の日にはあまりの驚きに椅子からずり落ちそうになるほどの発言が飛び出した。今度は前日の発言をさらりと翻して「実は昔から作り置きはやっていて、それは前日に言ったように看護師が一人で勝手にやったことではなく、医院ぐるみで大勢の看護師が絡んでやっていた 、ただし私は知らなかった｣とのこと。更に「マスコミでは私のことを金儲けのために点滴を数多くしていると言っているが、実は私の家には風呂がないんです。そんな開業医がどうして金儲けに走るんでしょうか？｣と涙を拭くしぐさをしながら言った （かなり芝居がかった所作で涙は一滴も出てなかったが)。

この松田聖子も真っ青の演技を見ていて、私はどういう訳か自分のことのように恥ずかしくなった。この医院はその医師が自分で言っていたが、一日に３００人以上の患者数があるとのこと。もしそうなら 実質的な年収は１億を軽く超えるはず。それで風呂がない？　唐突にこんな変な発言をして、それで同情でもかおうとしたのか判らないが、インタビューとしてはあまりに稚拙だ。おまけに医院の管理者としてあまりに責任感が欠如している。 案の定、翌日には近所の人たちから、「風呂がない訳ないじゃない！あんな豪邸に住んで、ベンツに乗ってるんだよ！」と苦笑されていた。

５８歳のこの医師は今まで近所で評判が良かったという。確かにそうなんだろう、そうでないと３００人平均の患者は見込めないだろうし、近所の人も「良い先生だよ！」との声も多いようだ。 ただし管理責任者としての適正もそうだが、医師としても適格性も疑われる面がある。それは毎日１００人に点滴をしていたというのだ。重病の癌患者を大勢看ている大病院ならいざ知らず、この規模の個人医院でただ痛みのためにこれ程の点滴を毎日するというのは、そもそも基本的な治療方針を疑わざるを得ない。

この数の点滴を作るにはかなりの時間を要するので、作り置きでもしなければ診療時間内では到底ボトルを準備するのはまず無理だ。勿論、この医師でもそんな事情は分からない筈はない。この医師の発言は毎日変わっているが、本日の朝刊では遂に「実は以前から作り置きしていたのは知っていたし、今でもやっているのも知っていた、ただし私が指示していた訳ではない」としぶしぶ認めている。これもその内に「実は私が指示していました」と変わるのかもしれないが・・・・。どちらにしろ今後インタビューでのあの見苦しい演技は止めて、真実を話して欲しいものだ。