友人のこと

葬儀において故人と関係が深い場合はその別れはかなり辛いものがある。先週末に私の最も親しくしていたゴルフ友達が逝った。彼とは私がこちらで開業した１４年前からの付き合いで、その間日曜日には毎月何度かゴルフをプレーしてきた。 彼が同じ場に居ないゴルフラウンドはあまり考えられないくらいだ。 多分今までホームコースだけでも３００回近くは一緒にプレーしてきただろう。

彼は小倉の出身で幼い頃は魚町商店街のアーケードに登って遊んでいたくらいで根っからの小倉っ子だった。また小倉高校出身で久留米大学卒業なので北九州市内に友人や知人も多く、この地に ほとんど知古もない私は仕事や遊びに関することまで色々なことを教えてもらった り人を紹介してもらった。

また彼は細かな気遣いができる明るい性格で友人も多かった。人見知りする私が熊本からこの地に転居してきてまだ何も知らないなかで、彼とその周囲の友人とすぐに打ち解けてゴルフを一緒にしたり飲んだりするようになったのも彼のお蔭だった。年齢は私より４つ下だったが余りそんな事を感じさせないくらい豪快な面があり、私が何か言うと「またオジサンが訳の分からんことを言うとるっちゃ！ガハハハッ」と笑い飛ばしていた笑顔を思い出す。

彼は最近医師会やロータリークラブの理事などいろいろな役員をするようになっていたので、日常の診療以外でもかなり忙しく日曜日でもそれらに活動に費やすことも多かった。以前はゴルフやレジャー主体の週末が次第にボランティア活動などに占められるようになるのは仕方なかっただろう。亡くなる前の一ヶ月も、医師会のゴルフ旅行で一緒にプレーした後は３週連続で彼とゴルフをする予定にしていたが、一週目は大雨の中ラウンドしたものの、次の週は彼がロータリーの活動で休み 、次の週は私が雨を嫌ってドタキャンしたのでこれもなくなった。

思えば３週間前にあの大雨の中でびしょ濡れになりながらラウンドした時が彼の顔を見た最後になった。こんなことならドタキャンしなければ良かったと悔やんだが後の祭り。おまけに その日は前日まで大雨の予想だったし風邪気味だったこともありキャンセルを入れたのだったが、当日は全く雨は降らず余計に判断を誤ったことを悔いる結果になった。どんな雨でもキャンセルすることはない彼に詫びのメールを入れておいたが、彼はそんな事は一切触れず「また一緒にプレーする日を楽しみにしてます」と返信を送ってきた。

今となれば彼との交流において後悔することが多々ある。数ヶ月前にも前夜の酒が残っているためゴルフ場にタクシーで来た彼から、プレー後に家まで送ってくれるように頼まれた際に自分の用を優先して断ったことがあった。こんな事を頼まれたのは初めてだったのに ・・・・。また以前から酒 が大好きで最近頓に宴席も多くなってきていたようなので、近くで見ていた私はもっと身体に気をつけるように助言するべきだった。

今振り返れば、私のような我が儘な人間によくぞ１４年間も嫌な顔一つせずに付き合ってきてくれたと思う。日頃からそんな感謝の気持ちは持ってはいたのだが、今まで一度も口に出して言ったことはなかった。 いつかは酒の席ででもそんな気持ちを伝えようと思ってはいたが、もうこれで一生彼にそんな気持ちを伝える機会はなくなってしまった。

葬儀はこれ程多くの人が参列したのはあまり見たことがないというほどだった。葬祭場の広大な駐車場でも足りずに車が溢れかえっていたし、葬儀場にも参列者が入りきれずにエントランスに人が溢れていた。父上も医師で彼を含む兄弟３人とも医師だったのでそちらの関係者も多かったんだろうが、やはり彼の交際の広さや人柄に依るところが大きいかったと思う。こんなに多くの人に見送られたのは５０歳という若さで逝った彼にはせめてもの慰めになったであろうか。

小さな身体ながら誰もが驚くほどゴルフが上手くて、何処に居ても分かる位声が大きくて、老人を自分の親のように大事にして、誰からも愛されていた友よ！　暫らくはゆっくり骨休みして 、何時になるか判らないが私がそちら行った時はまた思いっきりゴルフをしよう！