思考放棄？

先週末に北朝鮮を観光で訪れていた韓国女性が北朝鮮兵士に銃撃された死亡した。テレビなどでは連日この事件絡みのニュースを流しているが、これに関しては少々不思議で腑に落ちないことがある。それはその銃殺された被害者が２メートルもあるフェンスを乗り越えて立ち入り禁止区域に侵入したのかどうかに関してだ。

この問題についてはキャスターや評論家などがいろいろコメントを発しているが、彼女がフェンスを乗り越えるのは無理だろうというのが一般的な意見のようだ。それは当然だろう、写真を見るとそのフェンスを乗り越えるのは若い男性でも難しいそうに思えるし、一方被害者女性は小柄な中年女性だ。

とは言っても、私が不思議に思っているのはそんな事ではなく別にある。ニュースで見るフェンスの写真は確かに高く頑丈そうに出来ていて、一見するところ破れている箇所もなさそうに見える。ただしこのフェンスは浜辺から海の中まで切れ目なく続いているわけでなく、どう見ても浜辺の途中で寸切れの状態に見える。つまりちょっと右に回り込めば幼稚園児でさえフェンスの向こう側に入っていけるように見える。

ただワイドショーではいろいろな識者や評論家が誰もそんな発言はせず、「ビデオを検証するしか・・・」とか「フェンスには電流が流れているはずだから・・・・」と訳の分からない発言に終始している。あまりに皆がフェンスの切れている状態に関しては発言しないので、私の目の錯覚でそう見えているだけかと思っていた。ところが今朝はある放送局がこのフェンスの切れた状態のことに関して初めて報道していた。やはり眼の錯覚でもなんでもなく、あのフェンスは浜辺の半ばで終わっていて、誰でもその 切れた端の横を通り過ごすことが出来たのだ。

私が不思議に思うのはこれ程誰が見てもフェンスがない部分がはっきりしているのに、一旦誰かが「どうしてこのフェンスを乗り越えたのか不思議だ！」と発言すると、その後は誰もフェンスのない部分について発言しなくなるのかということだ。ワイドショーではその道に詳しい識者や評論家などが何名も登場していろいろコメントする。中には頭のシャープな者も居るのでこんな事が判らない筈はない。

これは出演者全員がある種のマインドコントロール状態に陥るのだろうか。それとも以前にも言ったように、日本人が自分の頭で考えることを止めてしまった事に関連しているのだろうか。どちらにしろ最も 自然で確率的に高いことを考えないで、あの高いフェンスをどうして乗り越えるのかという困難極まりない方法を必死に考えるという可笑しなことになっている。

誰かが一旦レールを敷くと、その後は自分の頭で考えないでそのレールの延長線上でしか考えられないとすると悲しいことだ。これも今日のニュースで報道されていたが、振り込め詐欺被害が今年は凄まじく増大して過去最大に達したそうだ。どうしてあんなに多くの人達が簡単に騙されるのか不思議でしょうがないが、これも自分の頭でしっかり考えない習慣がその被害を助長しているのではないだろうか。 まったく関連のないようなこの二つのニュースも根っこでは互いにしっかり結びついているような気がする。