ポール･ニューマン

私が中学生になってからテレビで「日曜洋画劇場｣を観るようになって、一気に映画の世界にのめりこんでいった。これは学校でも話題になって月曜日に登校すると級友との間で前日に観た映画 をいろいろと評価しあったものだった。小遣いを貯めては雑誌「スクリーン｣を買ってハリウッドスターの写真を眺めるのも楽しみの一つになった。そしてその時の映画好きは ５５歳になった今に至るまで続いている。

その当時、ゲーリー･クーパー、クラーク･ゲーブル、ジョン･ウェイン、カーク・ダグラス、チャールトン・ヘストンなどキラ星の如くスターが活躍していて、ハリウッドの黄金時代と言っても良かったと思う。そのなかでも私が最も好きだった男性俳優はポール･ニューマンだった。私の中では他のスターとは頭一つ抜けている程のスーパースターだった。

多分、彼を始めて観たのはロッキー･グラジアノをモデルにボクシングチャンピィオンを描いた作品「傷だらけの栄光」だったと思う。 この「傷だらけの栄光｣は大ヒットして、これが彼の出世作となり５０年以上にわたってハリウッドでスターの座に君臨することになる。精悍な体つきと俊敏な身のこなし でこの作品を見事に演じきったニューマンはなんとも魅力的で、私は以後放映される 彼の作品は総て観るようになった。なかでも「左利きの拳銃｣、「ハスラー｣など素晴らしい作品で、４０年以上前に観たこれらの作品は今でも鮮明に思い出すことが出来る。

これらはかなり以前封切られた作品をテレビで観たものだったが、私が高校生の頃には「明日に向かって撃て｣、また大学生の頃には｢スティング｣と立て続けに話題作が封切られ、リアルタイム の彼を見ることが出来た。この二作品ともロバート･レッドフォードとの共演で世界的な大ヒット作品となった。 その頃彼は５０歳前後だったと思うが、若い頃の精悍さも失っておらずその上渋みも加わって素晴らしい役者になっていた。 その頃世界中の女性に人気のあったロバート･レッドフォードと比べても、その圧倒的な存在感や渋みのある魅力で優っていたと思う。

その後も社会派の作品で世間に波紋を投げかけたり、「ハスラー２」でアカデミー主演男優賞を獲得したりで老年になっても俳優として円熟していった。また映画を作ったことがきっかけで自動車レースの世界にも入り込みレーサーとしても大活躍したり、公民権運動でも政府のブラックリストに載るほどの活動もしていた。そんなスーバーマンのような彼も歳には敵わず先週天寿を全うしたことが新聞で報じられていた、合掌。