バナナ・ダイエット

先日、朝食の時にいつもの様に野菜ジュースを作っていた妻がバナナが手に入り難くなって困っているとこぼしていた。理由を聞くと最近テレビでバナナダイエットなるものが放送されて、それがきっかけで全国的にバナナが品切れ状態だとのこと。こんな事はこれまでも品を変えて何度となく起こってきた現象で、 以前の納豆のように今回のバナナもそのうち飽きられてまた十分にスーパーに並ぶようになるのだろうがまったく迷惑なものだ。

ただ妻によると今回のバナナダイエットに関しては医師や栄養士が本まで出版していて全国的にかなり人気のある方法らしい。気になってテレビのニュースショーで披露されていた方法を見てみるとこれが全くふざけたものだった。方法は簡単で朝食をバナナ一本に水で済ませて後の二食は普通に食べてよいとのこと。これを実行すると痩せるのは当然のことだが、そもそもこんなことを医師が推奨するほうがどうにかしていると思う。

そもそもバナナ一本だとカロリーは８０キロカロリー（１点）で、これで昼食と夕食を以前と同じカロリーで済ますとこれだけでかなりカロリーを抑えることになる。問題は午前中の活動に必要なエネルギーを１点では摂取することは出来ずに、エネルギー不足に陥りやすいこと。また朝食でここまでカロリーを抑えると一種の飢餓状態になるので、残りの二食でその分を取り返そうとして人体の栄養摂取率が上がってしまい太りやすい体質になってしまう可能性が高い。

テレビではバナナの酵素の働きで痩せる体質になっていくなどと言っていたがこれは眉唾だ。これが本当なら大昔からバナナを大量に食べていたミクロネシア周辺の原住民はガリガリに痩せ ている筈だが、彼等は揃いも揃ってメタボというより強度の肥満体だ。こんないい加減な論法で、医師や栄養士が藁をもすがる人達をこんな方法に誘い込むのは、詐欺師的行為だと言っても過言ではないと思う。 また一般の人がいくら栄養学的な知識がないといっても、こんな首を傾げたくなるような理屈を妄信するのはどうかと思う。以前にも言ったように日本人は次第に考えるのを放棄しつつあるのではないだろうか？

ダイエットに近道はなく、摂取する食事のカロリーを記録していって摂取カロリーが消費カロリーを大幅に上回らないようにすることに尽きる。昨年、５０キロ近く減量したオタク漫画評論家が本を出版していたが、「レコーディング･ダイエット｣がまさにダイエットの王道だ。彼は誰に教わるでもなく自分でこの方法がベストだと気づいたようだが、期せずして最良の方法を考え出したと思う。

私も１４年前から食事のカロリーを記載し続けているが、これは食事を制限しないでただ記録していただけだった。ただ５年前には宴会や酒の飲みすぎなどで７８キロまで体重が増えたのを機にカロリー制限を加えると、１年で６８キロまで減量し現在もそれを保持している。これは慣れると一食分は１０秒〜２０秒で計算できて簡単だし栄養のバランスも取れて健康的だ。因みに私の場合は朝４点、昼７点、夜１１点の一日２２点を基準にしている。もちろん日によって増減はあるがこんな大雑把な感じで全然問題ない。

そもそも人間は食事を腹八分に抑えるか十分に運動をすればメタボになることはないのだが、そんな人間の本能に根付いた食欲を抑えることができる人間なんか極少数だろう。ほとんどの凡人はある程度満腹になるまで食べたり飲んだりしないと止めないものだし、運動も億劫でなかなか腰が上がらない。もちろん私もそうだが （１０年間続けたウォーキングも３年前から止めている）、この方法でこの５年間体重の変動はほとんどない。この方法に慣れるとカロリーを抑えながらボリュームを増やしておなかいっぱい食べたり飲んだりが可能になる。お腹がすいてるのを我慢しないのでリバウンドも起きない。

多分今回のバナナダイエットも半年もすれば誰も覚えてないくらい顧みられなくなるものと思われるが、その後にはまた品を変えて似たような方法がテレビで紹介されてまた 流行ってしまうのだろう。こんな愚かな方法を何度も繰り返すことなく理に適った方法を取れば、誰でもメタボに悩まなくて済むのにと残念に思う。最近参加した同窓会で学生時代にはスリムだった同級生が半数以上メタボおじさんになっているのを眼にして余計にその感を強くした。