外国人看護師制度の欺瞞

現在、老人の看護、介護を引き受けうる看護師が足りなくなってきており、しかもこれは将来もっと深刻な状態まで進むのは間違いないと思われる。これはもう日本人だけで賄えないとのことから外国人に門戸を開いて、彼らに日本の老人の 看護を任せようという制度が発足している。インドネシアやフィリッピンの女性に日本で働いてもらおうとするものだ。この制度は経済連携協定（ＥＰＡ）に基づいていているが、それなりに双方にメリットがあり有意義な制度だと思っていた 。しかしどうも実際のシステム を検証するとどうもそうではないらしい。

最近になってぼつぼつ報道されてきているが、この制度には大きな欠陥があることが露呈されてきだした。と言うより、ある思惑を持って日本がこの制度を作ったと いうほうが正確だろう。簡単に言えば、少し前に農業分野でさまざまな問題を引き起こして非難された農業研修員制度を介護の分野で創り上げようとしていると思う。

これは中国などの人的資源を日本の農業の小間使いのようにするために、研修員という形を取って廉い報酬で重労働に従事させて研修期間が終わったらまた次の人間を研修員として働かせる制度だ。農業技術の研修が目的でアルバイトではないというのが建前だが、実際は安い労働者としてしか思っていない。そこからさまざまな揉め事が持ち上がってきて、国際間での問題も浮上してくる。 双方の狙いが全く違うのでこれは当然だろう。

看護師の問題も全く同じで、日本政府のほうは外国人の安い労働者を使うことしか眼中にない。それはこのシステムを見るとすぐに分かる。その制度とは東南アジアから 看護候補者として日本の看護の現場に受け入れる。働きながら（その間は安い賃金で現場の看護を学ぶ！)日本語の勉強と看護の勉強をし、３年後に日本人でも難解な専門用語満載の 看護師試験を日本語で受ける。そして合格ならそのまま日本で働くことが出来るが落ちたら即出身国へ強制送還だ。

この試験が恐ろしく難解で、しっかり受験準備をした日本人の受験者でさえ合格率５割という代物だ。看護の現場で重労働しながらの外国人受験者はどんなに必死に勉強しても２割も合格しないだろう。最悪の場合は一割も合格しないかもしれない。しかもこの試験は一発勝負になっており、その一回きりの試験に落ちると３年間の努力は水泡に帰す。この狙いは明らかに合格者を最小限に して、外国人が日本に定住することを阻止するために設けられた制度だ。

結局、日本側の狙いは二つあるのだろう。一つは３年ごとに看護の現場に廉い労働者を入れて、賃金の高くなる労働者は強制送還して日本で働けないようにもっていく。二つ目は日本が外国人を受け入れているとアピール することだ。日本は従来より移民や難民など外国人を受け入れないと国際社会より非難されている。この非難に対して日本は受け入れたが彼女たちが勉強不足で試験に合格せずやむなく帰ってもらったと言い訳が出来る。

こういうあくどい制度を創って運用しているのが、日本の当局なのだから全く開いた口が塞がらない。こんなことをやっていたらこの制度で夢を持って日本にやってきて、さんざん３Ｋの現場で働かされあげく強制退去させられた人たち があまりに可哀相過ぎる。テレビで見た彼女たちは文句も言わずに働いて、帰宅後夜更けまで時間をみつけて看護や日本語の勉強を黙々としていた。日本側の思惑を知ったら一体どんな気持ちになるだろう。これは本当に酷い制度だ。