ＷＢＣ考

ＷＢＣは月曜日の韓国戦に敗れ、結局東京ラウンド２位通過という結果になった。これには熱狂していたファンの総意として不満なのだろうが、私はよくやったと思っている。そもそも実力でははっきり言って韓国のほうが力は上で、それは今までの戦績が如実に物語っている。この１０年間では日本の３勝７敗、ここ９年間では日本は韓国に一勝しかしてないのだ。

だからこの一次ラウンドで韓国相手に一勝一敗のタイで、台湾と中国に勝ったというのは上出来だと言っていいだろう。日本ではマスコミが悪い癖ですぐに一次ラウンド１位通過でＷＢＣ本戦優勝だと持ち上げることもあり、それに載せられたファンは このラウンド２位通過を失望を持って受け止めがちだ。しかし日本の実力からしてこれはよくやったと褒めてやって良いと思う。

マスコミはかなり以前からＷＢＣ二連覇とぶち上げているが、世界を見渡すととてもそんな情勢ではない事は明らかだ。まずアメリカを始めとしてドミニカ共和国、ベネズエラの三国はほとんど全員が 巨躯の大リーガーの選手で構成されていて、パワーでは日本など問題にしないほど強力なチームだ。この三国は総力としても日本より数段力が上だろう。

またオーストラリアも大リーガーの選手が入ってきて相当に強力だ。キューバは国際大会でいつも優勝か二位で相変わらず強いが、昨日も南アを相手に場外を含むホームラン６本をかっ飛ばして強烈な印象を残して粉砕している。この２チーム と韓国は客観的に見て日本と同等以上の戦力を持っていると思う。北京五輪ではキューバ、アメリカ、韓国に一度も勝てなかったことを忘れたわけではないだろう。以上から推測すると、日本の実力はどんなに甘く見積もって４位、冷静に見ると７位が良いところだろう。そのほかメキシコや プエルトリコなども侮れない力を持っている。

つまり二連覇どころか二次ラウンドを勝ち抜いて、上位４チームによる準決勝にも進出するのはかなり難しい状態なのだ。そんな状態でこれまでのように日本のマスコミが二連覇だ！世界一だ！と煽り続けるのは危険極まりない。それは北京オリンピックの時の二の舞になる危険性がある。北京の時に星野監督が袋叩きにされたように、今回は原監督 を寄ってたかっ叩く醜態を繰り返すつもりなのだろうか。

北京の時は、星野ジャパンはオリンピック優勝間違いないとさんざん持ち上げ続けた挙句に、負けると一転ぼろくそに攻撃して酷い扱いだった。 あの時は星野監督自身にかなり問題があったので致し方ない面があったが、今回の原監督は客観的に見ても理に適った采配を振るっていると思う。彼を今回同じような目に遭わせる様な事態になると、今後は誰も日本チームの監督を引き受ける者がいなくなってしまうのではないだろうか。

前回のＷＢＣ優勝は二度とないような大ラッキーによりもたらされたものであり、応援するほうももっと冷静に実力を考えて臨むべきだろう。 そして日本チームが万が一にも健闘よろしく４位にでもなれたら大いに称えてやるべきだ。けっして「上位３位に入らずにオメオメと帰ってこれるな！｣と原監督やチームを貶すことだけはしてはならない、それが日本チームの実力なのだから。