新型インフルエンザ　その２

遂にと言うか当然のことと言うか、日本国内で新型インフルエンザが発生する事態になってきた。そもそも検疫は時間稼ぎにしかならないのは分かっていたので、現在の事態も初めからある程度予想されていた。しかも今回の新型インフルエンザの感染力の強さから言って 、患者の実数は発表された人数の１０倍以上は居るものと思われる。

ところで今回国内発生患者の第一例を発見した医師には感心することが多い。そもそも海外渡航歴のない人間の検体を専門機関に届けて検査を受けるという発想は普通の医師では持たないだろう。 厚生労働省の通達でも 今回の件で保健所などへの届出をする条件として高熱や急性呼吸器症状の他に、新型インフルエンザの蔓延する国や地域への渡航歴があることを挙げている。

それからしても今回第一例を届け出た医師の行為には敬服する思いだ。ただその後についてはこの診療所は１０日間の閉鎖を言い渡されていて、いくらなんでもこれはあまりに可哀相過ぎる。一般診療所が１０日間も休業するとその損害は甚大なものだ。今回のインフルエンザが弱毒性なのを考えると、この 措置はあまりに的外れだと言わざるを得ない。

一人二人ならまだしもここまで日本でも患者数が増えてくると、今までのように強毒性のインフルエンザを想定した対処法では社会的損失のほうが大きくなりすぎるのではないだろうか。また患者と濃厚接触した者の隔離などすでにもう不可能な状態になっている。大阪の橋下知事が言ってたように、これはいずれ普通のインフルエンザと同じ対処法に大きく舵を切らないと、社会生活上あまりに損失が大きくなりすぎるだろう。

奈良県でこのインフルエンザの疑いがある生徒が１５００人居るのではないかとの疑惑が浮上しているが、そこまで居なくても既に日本中でかなりの感染者が存在している可能性も出てきている。と言うのは、昨年までこの時期 の定点観測でＡ型インフルエンザは極少数だったのが今年に限っては日本中で８０００人ほど報告されている。ある専門家はこのうちの 何割かは新型インフルエンザではないかとの疑念を抱いている。

しかもこの新型インフルエンザは弱毒性なので本人も知らないうちに感染して、その時はたいした症状も現れずに自然治癒している者も多いはずだ。となると、現在の感染者の実数はもっと多くなることになる。しかしこのことはけっして悪いことではなく 、むしろ秋以降に襲ってくる第二波に対してワクチンを打ったと考えればよい。ウィルスが弱毒性のうちに免疫も持った者を出来るだけ多くしておくことはウィルスの対策上重要だ。しかも第二波は強毒性へと変異する可能性もあるので、これは第二波に対してのかなり有効な防波堤になると思われる。

いずれ日本もアメリカやメキシコ並みに数千人〜数万人規模の患者数になるのは時間の問題だろう。その時に備えて現実的でない対処法に力を注ぐのは止めて、普通のインフルエンザのように体力のない幼児や基礎疾患を持っている人への治療を重視してあとはワクチン製造とタミフルの備蓄に力を注いだほうが 賢明だろう。

極論を言えば、今回の新型インフルエンザはそれ程問題でなく次に来るかもしれない第二波が問題であり、もし第二波が強毒性に変異した場合について対処するのが最も重要なことだろうと思う。尤もスペイン風邪の時とは違ってワクチン製造技術も抗ウィルス薬も格段の進歩を見せているので、万が一 スペイン風邪と同程度の毒力のウィルスが出現してもそれ程の被害は出ないとは思うが。

因みに日本では品切れになるほど引っ張りダコのマスクだが、欧米各国やＷＨＯでは感染者が装着することは意義を認めるものの非感染者についてはその必要性なしもしくは装着すべきでないとの見解で一致している。ニュースを見ても海外で日本人やアジア人の集団だけマスクをつけているのを見ると異様な感じがするのは私だけだろうか？　私も感染者じゃないので当然マスクは装着していませんが・・・・。