アンタビュース?
　

前金融相の中川昭一氏が突然亡くなった。彼は私と同じ年齢で自民党でも要職を務め続けてきており、将来の首相候補と目されてきていたので以前より注目していた。私もあの経歴や学歴からして将来はいずれ総理大臣間違いないと思っていたら、人気だけでその器でなかった安倍代議士に先を越され、また 漢字さえろくに読めない麻生総理の後塵を拝してしまった。その内に例の外相会議での朦朧会見の責任を取る形で辞任に追いこまれ、その流れのなかでの選挙で初めての落選とあいなった。

今頃になってマスコミも以前と論調を変えて故人を持ち上げる報道を流しているが、本当に彼はツキがなかったと思う。本来なら自民党の中心になっていずれ総理の椅子は堅かっただろう。優秀で実力も兼ね備えた彼の唯一の弱点は酒だと言われてきたが、シャイな性格の彼には政界の荒波を渡っていく のに酒も必要だったのだろう。

とは言っても、あの外相会議でのヨレヨレ会見は酒だけのせいではないと思う。話によると彼は腰痛があり、鎮痛剤や鎮静剤などの薬剤を常用していたと伝えられていた。 そのためアンタビュース作用をおこして、薬と酒の相乗効果であのような醜態になったのではないかと推測される。一人でも周囲にアンタビュース作用を知っている人間がいたら 、あのような醜態は避けられたはずで本当にアンラッキーだと思う。 因みにアンタビュース作用とは抗生剤などの薬剤とアルコールが反応して、少量の酒でも酩酊に近い状態になることを言う。

それで思い出すのは私がまだ大学病院で駆け出しの医師の頃だった。 大学病院の耳鼻科医局での送迎会があり、当直以外の医師やナース、事務員など４０人前後が出席して宴会を開いていた。宴会は何時もの如く盛り上がって二次会に行こうと いう流れになっていた。ところがいざ出ようとした時にあるナースがベロンベロンに酔っ払ってまったく正体不明の状態になってしまった。

このナースは美人で酒も好きなたちで二次会には必ず出席する人だったが、その時はとてもそのような状態ではなかった。そして悪いことにその日は何かの用で二次会には参加しないでご主人が迎えに来ることになっていたのだ。そしてその宴会場から１００メートルくらい離れた駐車場に既にご主人が車で到着して待っていたのだ。

彼女は歩くどころか意識もないような状態だったので、私の一年先輩の医師が彼女をおんぶしてご主人のところまで連れて行くことを上司から命令された。何人かがその先輩と一緒にその駐車場まで歩き始めたが、駐車場からこちらを睨んでいるご主人の鋭い視線に耐えられずに一人二人と脱落していって最後の５０メートルはその先輩一人で駐車場まで行く羽目になった。もちろん一人で突き刺さる視線を浴び続けながら・・・。この時の５０メートルは物凄く長く感じたと後からその先輩から聞かされた。

彼女があんな風に酔いつぶれたのは後にも先にもこの一回きりで、彼女自身もどうしてだか全く分からないと言っていた。後から考えるとこれがアンタビュース作用によるものだった。その日彼女は 咽頭痛があり、抗生物質と鎮痛剤を服用していたのだった。中川昭一氏も彼女と同じ状態で、自分でも訳が分からずにベロンベロンになりどうしようもなかったのだろう。テレビの報道でも中川氏はどうしてあんな状態になったのか納得できないといった感じに見えた。

日頃 よく使う薬の相乗作用が一人の政治家の政治生命と、さらには日本の行く末まで影響した可能性を考えると、なにやら背中の寒くなるような気がする。