ネアンデルタール人
　

数日前のニュース報道によると、ＤＮＡ分析によってネアンデルタール人が現世人であるホモ・サピエンスと共通の遺伝子を持っているとする論文が雑誌サイエンスに投稿されたとのこと。 ぼんやり見ていると見過ごしてしまいそうだが、これは重要な意味を持っていると思う。それは今までネアンデルタール人とホモ・サピエンスは別種であり、 別系統に進化していったと考えられていた。それが雑種が形成されていたということはネアンデルタール人は我々と別種でなく、同種内での一亜種だと言うことになる。言ってみれば、白人や黒人、黄色人種などと同じレベルの違いにしか過ぎないのかも知れないのだ。

もう少し詳しく説明すると、人間とチンパンジーの間に雑種が出来ないのと同じで、特殊な例外を除き種が違えば雑種は形成されない。また種が違えば 系統的にも別の道を歩んでいったことになり、我々の祖先ではないことになる。ところがもし種内での亜種だとすると、共通の祖先が居るかも知れず我々の祖先との目も出てくる。

私は以前からネアンデルタール人は骨格もごつく顔の彫りも深くて西欧人に似た形質を持っていると 思っていた。ただ学問的に全くの別種だとされてきたので偶然そのようになっているのだと 一応納得していた。しかしこの論文が認められるとそれもこれからは覆るかもしれない。ただこの論文によると、ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界中に広まっていく過程で、まず中央アジアに住んでいたネアンデルタール人と交雑して共通の遺伝形質を獲得したようだから、アフリカに住んでいる人々以外の白人、黄色人種は総て大なり小なりこのネアンデルタール人の形質を持っていることになる。

そうなると私が以前想像していたように、欧米人の祖先がネアンデルタール人との交雑で骨格のごつい形質を持っているのではなく、別の要因でそうなったのかも知れない。早い話が我々日本人もネアンデルタール人の形質を少しは受け継いでいるとのことになる。 普段我々は欧米人のなかにほとんどネアンデルタール人の親戚ではないかと思えるほど、似たような容貌や体躯を持った人達を少なからず目にする。ただし平べったい顔で骨格の貧弱な日本人にネアンデルタール人の形質が流れているとはあまり考えにくいことではあるが・・・・。

それにしても現代科学の進歩とは素晴らしいもので、３万年前に滅びたとされるネアンデルタール人がどのような遺伝形質を持っていて、それらが我々現世人とどれだけの違いがあるのかをも明らかに出来るのだ。 今後もこのような遺伝学的手法を用いてまだまだ新しい発見が続いていくことを考慮すると、この先人類進化の研究に大きな転換が待っているのかもしれない。