北方四島

　

ロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪れたというので、日本の内閣はショックを受けているようだ。これはその振りをしているだけかもしれないが、それにしても民主党政治家の外交オンチは相当酷いものだと言わざるを得ない。これは何週間も前から事前に公言していたことだし、こういう事態になったのも前原外務大臣の発言がかなり影響しているだろう。ロシアの大統領が日本の外務大臣に「北方４島に行ってはいけない」と言われたら、逆に行かないと日本の政治家の言うことを聞いたことにな り立場がなくなるだろう。

そもそも日本の政治家は実効支配 を分かってないように思われる。北方四島はロシア、竹島は韓国、尖閣諸島は日本が事実上実効支配している。歴史的に見て、これを覆すのは戦争しかない。あの激烈なテロで恐れられたＩＲＡでさえ結局イギリスの実効支配を覆すことはできずに諦めたし、パレスチナではイスラエルの実効支配は国連決議でさえまったく無力だった。それ程実効支配の事実は重く、特に戦後６５年間ロシアの実効支配が続いている北方四島はどうしようもないほど に支配が強固になっている。

だから日本が本当に北方四島を取り戻したいのなら（今までの四島一括返還を主張する限り）ロシアと戦争をするしかないのだ。そこまで日本人が考えているのかどうか？　私にはそんなふうには思えない。だとすると未来永劫 交渉の進まない四島一括返還を下して、まず二島返還を先行させその後に残り二島の獲得を目指すべきだ。これこそが政治家の実行力だと思う。

なにより以前からロシアは二島返還には応じるというサインを出しているし、それどころかプーチンにしてもそれを明言している。 さらにメドベージェフは三島返還さえ匂わせている。故に変なメンツに振り回されずにまず二島を返還してもらって平和条約を結び 、次に極東シベリアの開発やサハリンの天然ガス開発をして経済的に強く結びつくことがどれほど日本にとって有益な事か。 漁場としても世界有数のものでこれをそのまま手つかずに放置する手はない。ロシアも開発資金が枯渇していて日本の資金力と技術力はのどから手が出るほど欲しいのだ。 ただしうかうかしていると最近は日本があまりに現実から遊離した態度なので、韓国や中国がすり寄ってきている。それ程悠長な態度ではおれない状況なのだ。またロシアと手を結んで協力していくと、中国に対するけん制にもなるし良いことづくめだ。

結局、日本人は政治家、右翼、マスコミを含めて真剣に日本の領土を考えている者がいないのではないだろうか。ただ単にロシアに対して反対を叫んでいれば、それぞれ自分の立場に安住できるという思いだけでの行動のように思われる。 そもそも大統領が国後の地を踏んだからと言って、事態は何ら変わらないと思う。簡単に言えば、日本の姿勢が変わらない限り絶対に進展しない二国間交渉なのだから、大統領が四島の地を踏もうが踏むまいがどっちでも良いのだ。マスコミも 今回の訪問をエキセントリックに扱って少しでもニュースバリューを上げようとしているのかもしれないが、心底情けない限りだ。

今回のメドベージェフ大統領の国後訪問であたふたする日本の官邸を見ていると、日本の将来は相当に危ないと思わざるを得ない。