JT社長

　

先週、出身高校のホームページ掲示板を見ていたら、ある同級生が１２月５日開催のゴルフ日本シリーズについて書き込んでいた。これは日本ゴルフツアーの最終戦にあたり、この試合で今年度の賞金王などすべてのランキングが決まる重要な試合で大変注目を浴びる試合だ。私も その日ゴルフのラウンドから帰ってこの試合を楽しんだが、なんとこの試合の大会委員長で優勝カップを優勝者に渡すＪＴ（日本タバコ）社長が我が高校の同級生だとのこと。この試合はＪＴがメイン・スポンサーでその社長がカップ贈呈の 名誉に与ることになっている。

今頃言われても一週間前に既にテレビ放映は終わっていて、優勝カップの贈呈は見ていたはずだが記憶には全く残っていない。と残念がっていたら、この試合はゴルフ場から帰るのが遅くなった場合を想定してビデオに撮っていたことを思い出した。私はゴルフ中継は良く見るほうだが、すでに終わったゴルフの試合を録画してまで見ることはあまりない。欧米の試合で放映が真夜中〜早朝でどうしても見ることが出来ない場合や、日本の試合では日曜の放映時間に自宅に居ない時に録画するくらいだ。

早速、ビデオで表彰式を見てみると、確かに大柄なＫ村氏というＪＴの社長が優勝した藤田選手にカップを渡していた。彼が同級生のＫ村君なのだろうがどうも違和感がある。私の記憶では彼は私の友人だったＴ君と付き合いがあったはずで、学校でも何度か見かけた記憶がある。そのＫ村君は 山陰の田舎町から通学していてゴリラのような怖い顔をした長身の男でなんだか近寄りがたい感じを持っていた。私もＴ君とのつながりで何度か同じ場に居合わせたことはあったはずだが、実際にはそういう雰囲気もあったためか彼と会話したことは一度もなかったと思う。

ところがテレビで見るそのＫ村氏はにこやかに微笑んだ温厚そうな人物で、どうみても同級生のＫ村君とは一致しない。ただネットで調べるとＪＴの社長は昭和２８年に山口県出身と記載されているので間違いはないのだろう。高校の頃の痩身のシルエットは今では恰幅の良い中年の体躯に変化していたが 、それも年齢を考えると当然の変化だろう。同級生に聞くと彼は高校生の頃から性格は温厚だったということだったから、近寄り難いというのは外見から私が一方的に先入観を持っていただけなのかもしれない。

それにしてもビジネス雑誌などで見聞きした彼のプロフィールからはかなりのキャリアだった。京都大学を出てＪＴに入り、長年の海外勤務を経て４年前から社長になっているようだ。ＪＴといえば煙草だけの企業かと思いきや実際は海外を含めて多方面に進出していて、その中心になって獅子奮迅の活躍をしているのが彼だとのこと。現役で京都大学に合格したくらいだから、高校時代も成績は良かったはずだが、あまり目立ったタイプでもなかったように思う。文系のトップは剣道部の○○君で彼は現役で東大に進学した。彼は理系の私でもよく知っていて、同級生でただ一人東大に合格したくらいだから学年でも目立っていた。自然に注目を浴びる存在ながら、嫌味なところが全くないナイスガイだった。

その○○君は入社した山一証券で若くして課長まで出世していたが、突然の山一倒産の憂き目に遭って挫折を味わった。サラリーマンには運不運は付き物だろうが、彼の場合は本当にアンラッキーだったと思う。もしそのようなことがなければＫ村君以上に出世していたかもしれないのに、今では鳴かず飛ばずの状態のようだ。。一度 ＮＨＫのテレビで彼のプロジェクトを紹介する番組を見たことがあるが、それ以来消息もはっきりしないようだ・・・・・。やはり社会に出ると能力や努力だけではどうにもならないさまざまな要因や運などが人生に絡んでくるのだろう。

団塊の世代は当然として少し下の我々の世代も大勢の同級生がいた。同じ昭和２８年に生まれ大勢の同級生との熾烈な生存競争を乗り切って、あと数年で定年を迎えようとしている我が同級生の今までのサラリーマン人生に「長い間ご苦労様だったね」と声をかけたくなる心境だ。