モンスター・ペアレンツ？

　

モンスター・ペアレンツのせいで睡眠障害になったとして、小学校教師が担任をしている生徒の両親を訴える事件が起こった。このような訴えは前代未聞で 、私の記憶する限りでも今までまずなかった事件だろう。事の概略は生徒間の揉め事に関して先生のとった処置が気に入らないと生徒の両親が先生に執拗に抗議をして、その結果担任の女性教師が不眠など身体的に不調をきたしたとして５００万円の慰謝料を請求する訴えを起こしたという ものだ。

初めこのニュースを目にしたときは「また例によって非常識極まるモンスター・ペアレンツによって可哀そうな若手の先生が被害を受けて、どうしようもなくなって出るところに出たんだろう」と思っていた。そもそも教師が担任をしている生徒の両親を訴えるというのは 余程のことで尋常ではない。最近のモンスター・ペアレンツの報道もたびたび目にしていたので一層そういう感じがしたのかもしれない。また今どきの先生は非常識な親のせいで大変な目に遭うことが多く、精神疾患により休職に追いやられることも多いことが報道されている。 給食費も払わないで相手が先生という立場をいいことにサンドバックのように叩き続ける親もいると聞く。

しかしその後の報道を耳にすると今回の場合は少々違った状況も頭に浮かんできた。それはその両親が子供にＩＣレコーダーを持たせて登校させ、担任の会話を記録していた会話を聞いたからだ。その担任は４０台の女性教諭だが、その声はヒステリックで自分が先頭に立ってその生徒を学級全体で糾弾するかのように 一方的に責めていた。 それもいくつかの違った場面で似たような録音がされていた。その録音がこの事件全体の中でどのような経過の時に記録されたのか分からないのではっきり断定はできないが、その声は明らかにその生徒に対して嫌悪感と敵愾心に充ちていた。

もし 私がその生徒の親だとして、このような会話を聞かされると我が子を守るためにこの両親のような行動に出る可能性はあると思う。それで思い出すのは私が小学校３年の時のことだ。ちょうど同じようなシチュエーションで、我々の担任は４０歳代の女性教師だった。この先生がえこ贔屓が強くて数人の生徒を特に可愛がっていた。その一人が私の友人で 、彼と喧嘩をした時などは事情を聴かずに一方的に相手が叱られた。私もその被害に遭っていたのだが、それは酷いものだった。結局、この担任は親からの抗議で担任を外されて４年生になったときは別の先生が我々の担任になった。 その女性教師は大泣きして同僚に自分の無実を訴えていたが・・・・。あの当時はモンスター・ペアレンツなどという言葉はなかったから、このような教師はかえって始末に負えなかった。

今回の件は今までの報道ではどちらに非があるのか、または両方に問題があるのかイマイチ分からない状況だ。ただ私が今まで見聞きした材料で判断すると、これは両方ともに問題があるように思われる。両親は執拗に先生に対する攻撃を続けているし、警察に傷害罪で被害届を出している。 女生徒が背中を叩かれたからだというのだが、これは普通こうまでしないだろう。 私なんかヤンチャだったので担任には日常茶飯事でボコボコに叩かれたが、親はもっと厳しくやってくださいと担任に言っていた（これはこれで問題ありだと思うが）。先生に至ってはあのヒステリックで攻撃的な言動を一人の生徒に対して 繰り返し投げかけるだけで先生としての資質が疑われると思う。

普通はどちらかに相当大きな問題があっても、相手がある程度常識的な人間ならここまで事態が発展することはまずないだろう。 つまり出会ってはいけない二人が出会ってしまったところに今回の事件の根っこがあるような気がしてならない。 という意味では、今回の事件はそう何度も起こる類のもめ事ではないのかもしれない。