5.6パーセント
　

先日テレビのニュースを見ていて、これほど無力感というか憤りを感じたのも珍しいと思うほど、憤懣やるかたない気持ちに襲われた。それは東北大震災の瓦礫（がれき）の受け入れを表明した自治体の説明会で 、反対する住民グループの様子を報道したものだった。瓦礫の受け入れを説得する自治体の説明者にそのグループは必死の形相で反対を迫っていた。その眼は血走っているというか焦点が定まってなくいわゆる「いっちゃってる」目付きだった。それはもう冷静に反対を表明する態度ではなく、お化けか何かを怖がる様子だった。

昨日報道されたニュースではこの一年での瓦礫の処理は全体の5.6％しか進んでいないとのことだった。その主な原因はやはり自治体や住民の反対によるものだという。 ３．１１大震災の際に我々日本人は全員が協力して震災地を助けて行こうと誓ったのではなかったか。それが世界も動かして絆という言葉も生まれ国中で連帯が盛り上がって行ったはずだった。それがまだ一年も経ってないこの時期にこの体たらくはふざけるな！と言いたい。

この住民グループだけでなく、東北の雪を沖縄の子供たちに体験させようとした時にも沖縄の住民の反対でプロジェクトが潰されるし、ある地方では被災地からの避難者の子供が幼稚園に入園しようとしたらこれまた幼稚園関係者により拒否された。 これらはあまりに無慈悲で酷い仕打ちだと思わないのだろうか。この現象を見て、世の中で非難の声が巻き起こるかと思えばそうでもない。 これにはマスコミを含めて一体どういう思考回路をしているんだろうかと驚くばかりだ。

そもそも瓦礫にしても自治体が測定して放射能が異常値を示さないものに限って受け入れる何度も説明している。また幼稚園児については体から放射線が出ているとでも言うのだろうか？全くバカバカしくて空いた口が塞がらないという感じだ。こんな事は少しでも自分の頭で考えると危険がないのはすぐにでも分かりそうなのに反対派の住民はどうしてしまったのだろう。まるで思考停止にでも陥ったかのようだ。 そんな微量の放射能を問題にするのだったら、彼らは日頃飛行機に乗ったりしないのだろうか。そっちのほうが余程放射線を浴びることになる。それよりなにより日々宇宙からは放射線が降り注いでい て年間2.4ミリシーベルトという放射能を我々は受けてるのだ。瓦礫の放射線なんてこれの数千分の一〜数万分の一もないだろう。

つまりこれは相手の分からないもの、いわゆる幽霊などを怖がる心理と一緒なのだろう。そう考えないと全く理解できない現象だ。考えたくもないといった心境なのだろう。理詰めで考えればすぐにでも分かる事を漠然と不安がるのはそうとしか考えられない。 これが目に見えるとそうでもなくなるのだろう。つまり放射性物質を目に見えるものとして扱うとこんなことはなくなると思う。私なんかも大学院の時に多量の放射性物質が溶け込んだ 実験用溶液を誤って腕にかけたりしたことがあったが、ただ流水で洗い流してだけで次の操作に移っていった。 カウンターで調べても当然カウントはゼロだった。つまり放射性物質も他の汚染物と同じで口に入れたりしないで汚れたら洗い流せば何ともないのだ。

この一年で5.6％なら全体の処理が終わるのは一体何年かかるのだろう。20〜30年というべらぼうな年月を要するのではないだろうか。あまりに酷いと言わざるを得ない。こんなものは全国の地上自治体が協力すれば２〜3年で終了するのも不可能ではないと思う。 マスコミもこういう時はキャンペーンを張って、全国の47都道府県が引き受けるように世論を盛り上げる必要がある。現状では東京都の石原知事のように強力なリーダーシップで引っ張らないと不可能なの かもしれない。石原知事は日頃はあまり評価しないのだがこの一件についてはまことに素晴らしい決断を下したと思う。

度々ニュースで登場する反対住民のように無知が服を着て叫んでいるような者には余程のショック療法でも与えないと分からないのかもしれない。 情けないのはこんな無知な者たちに思考停止になって引っ張られて行く者が多いということだ。「日本人よ！一体どうした？」と叫びたい。それにしてもここまで来ると無知というのは笑って済ませられる問題ではな くもはや犯罪にあたると思う。彼らのせいで被災者たちも風評被害に苦しみ続け、それにつれて復興がどんどん遅れていく訳だから。