今回の全日空機のハイジャックはいろいろ異色な点が目立った。まず事前に犯人が犯行の予告をしていた。次にスタッフに犠牲者が出たこと。また犯人が一時的にしろ飛行機を操縦していた。
この犯人の行動が分かってくるとストーカーの執念深さを感じるが、この男は飛行機が異常に好きで航空界社の採用試験に３回落ちている。一橋大学を卒業しているのだから頭脳的にはあまり問題ないように思うのだが、やはりどこかに適性がないと判断される要因があったのだろう。
ちょうど恋焦がれた女性に振られた男がストーカーに変心していくように、彼も航空業界に怨念を増幅させていったのかもしれない。犠牲になったこのジャンボの機長も飛行機が好きで、家も格納庫のように作っているという。その意味では飛行機を好きな２人があの狭いコックピットで対峙していたことになる。
私なんかビジネスで飛行機を使う事はないので、比較的に飛行機に乗る事は少ないのだが、こんなことがあるとますます飛行機に乗る時の心理的な抵抗が大きくなる。たまに乗って墜落したり、事件に遭っては堪らないという気がしてくる。しかし今時、飛行機に乗る事を避けていると、国内は良いにしても外国に行く時はどうしようもないのだができる事ならあまり乗りたくはない。
今回の事件は全く盲点をつかれた格好になったが、飛行機を自分で操縦したいがために乗っ取りを図るというのはなかなか想定できる事ではないだろう。犯罪に対するリスクマネジメント優れているアメリカの担当者でも驚愕したのではないだろうか。
今回のケースはハイジャック時の最も基本的な対処の仕方である犯人を刺激せずにとにかく無事に地上に降りるということが非常に難しいと思われる。機長は本当に困難な事態に直面し、しかも今までのマニュアルが役に立たないという希な事件に巻き込まれる事になり、不幸な経過を辿らざるを得なくなったのだろう。
今回も犯人の名前が公表されていない。多分、精神鑑定を受けて無罪にまでなるかどうかは分からないが、かなり減刑される可能性が有ると思われる。
遺族の気持ちはどうなのだろうか。納得できるものではないだろう。加害者の人権も大事かもしれないが被害者の人権はもっと尊重されるべきと思う。
加害者は手厚く保護されて名前さえ分からず、被害者は名前どころか自宅まで公表されてマスコミにさらされる、といった何かおかしな現象を見るといつも疑問が湧いてくる。
テレビニュースで機長の上品な奥さんがマスコミに揉みくちゃにされるのを見ていて、割り切れないもの感じた人も大勢いたと思う。
