歯痛

一か月前から出現してその後治療を重ねていた歯痛だが、やっと今日で終わりの日を迎えることが出来そうだ。そもそも高校生の頃に一度だけ処置したことはあったが、歯に関してはほとんど痛みや支障を感じたことがなかったので今回はほとほと参ったという感じ。診断までにも時間がかかり、治療は比較的早く済んだものの歯垢をこれまた６０年間一度も除去したことがなかったので５回にわたって取ることになり、それが遂に今日終了という予定になっている。

初めに左の下顎歯の痛みを感じて、友人の歯科医を訪ねたもののイマイチはっきりした原因が特定できずに大学病院を紹介された。大学病院ではレントゲンを２回撮るなどで精密検査をして一応の診断はついたがなんだか納得できるものではなかった。そこでの返事を持って再び友人を訪ねたが、その返事に友人も首を傾げる感じだった。そうこうしているうちにある日左の上顎歯が痛むことに気づいた。それを友人に伝えると再度レントゲンを撮って、「間違いない！　悪いのは上の歯だよ！」と今度はみんなが納得するほどすっきりした診断がついた。

結局、私があまりに下の方を痛がっていたので、どこでも下の方ばかりに注目して上の歯にはほとんど関心が行ってなかったものと思われる。つまり私がかけたフェイントに皆引っかかったというのが本当のところだったのだろう。後で友人に聞くとこういう事はよくあるんで患者がどう言おうと歯科医は全ての歯を調べるのが鉄則なんだけど、僕が医師でしかもあまりに断定的に言うので皆がそれに引っかかったんだろうと言うことだった。

実際そういう事なんだろうと私も思っている。それほど初めは下の歯が痛んだのは間違いないんだが・・・・。私が日常診察していても、耳が痛いと受診した患者で耳はどうもなくて喉の炎症だけしかないケースはよく遭遇する。これは放散痛と言って扁桃炎などの痛みは耳の方へ響いて耳が痛いような感じになることは多い。それと同じような痛みだったんだろう。

結局、左上顎の親知らずの歯周病だった。その診断がついた後、すぐに原因になっている歯の抜歯を行った。これが不思議なくらいまったく痛みを感じなかった。抜歯自体は局所麻酔をするだろうからあまり痛みは感じなくて済むんじゃないかと思っていたが、麻酔は痛むだろうと覚悟していたのにこれも全く何時注射したのか分からなかった。歯科は処置に痛みがつきものなのでその辺りの研究が進んでいるのだろうか。我々耳鼻科医にも参考になる処置だった。

当然、現在は歯痛も全くなく爽快だ。それにしてもこれまで歯の痛みはほとんど感じたことがなかっただけに、歯痛がこんなに辛いというのが初めて気づかされた気がする。体の痛みは何処の部分でも嫌なものだろうが歯の場合は本当に気持ちも悪いものだ。今回の出来事を通じて、患者にとって痛みがどんなに苦痛でどれほど医師に期待しているかも再認識させられた。医師 もたまには病気をしたほうが良いんじゃないかと今更ながら感じた体験だった。