驚きの偶然
　

こんな事があるんだと驚くような体験をした。今週の日曜日に下関市で高校の同窓会が催された。これはちょっと特殊な同窓会で、下関市の４つの高校が合同で催す同窓会で２３０人が集まった。こんな例は珍しいらしくこれは新聞にも載ったことがある。この日、我々は昼に有志によるゴルフコンペがあったのだが、これが大雨で我々の組はハーフで切り上げてホテルに帰ってきた。昼の部は散々な結果だった訳だ。

そういう経過で夕方までゴルフ番組を見て時間を潰し、６時からの同窓会会場のホテルに行った。同窓会は還暦という区切りだし４校が集まるので大変な賑わいだった。なかには高校卒業以来初めて会ったような同級生が居て、懐かしさもあり大勢が遅くまで飲み明かしたようだった。人数が多いせいで２次会会場も出身中学別に４つに分散して行われた。我々は参加人数が４名と非常に少ない中学だったので、何人かの友人の居る指定されたのとは別の会場に向かった。

そこでも会場の隅の一角に陣取って再び旧交を温めたのだった。その後どういう経過かはわからないが３次会で居酒屋に行ったのだが、ここでは男女合わせて１０人くらいのメンバーだった。そこで昔話に盛り上がっていたんだが、ある時私が「高校時代に一度だけデートをしたことがあるんだ！」と話し出したところ、私の横に座っていた女性が「あ！　それは私じゃな いかな？」と言った。その女性は京都在住で僕は初対面だと思っていたんでびっくり仰天。

そのデートとは僕の幼友達Ｉ君が僕と友人のＴ君の２人を集め、そのＩ君の彼女が同じように２人の友人の女子高生を集めて３対３でのグループでのデートだった。確か遊園地で遊んでなにか食べながら話したという幼いデートだった。数時間で別れてその後は誰も別に発展することもなく（と思っていた）、何時もの日常に戻っていった。その女性が言うには「北尾さんのことは記憶がはっきりしないが、Ｔ君を含めた男３人グループでのデートは記憶しており、それも一回しかなかったんで間違いないと思う」とのこと。

そういう事でまじまじと彼女の顔を見てみると、確かにその顔には見覚えがあった。彼女は女子高生で通っていた高校も違い45年前に僅か数時間だけしか会ったことのない女性の顔を覚えているというのは、疑問を持たれるかもしれないが実はこれには理由がある。実は私は中高を通じてデートの経験はこの１回きりだった。それでこのデートの印象は強烈で、どこに集まってどのように遊んだのか今でも結構記憶が残っている。逆に言えば、どちらかと言うと勉強に明け暮れた私の青春時代の暗かった側面が反映されている訳で、この話を聞いた時には懐かしさと共に少々ほろ苦い感情も湧き上がってきた。

因みにこの女性は（私は知らなかったが）Ｔ君としばらく付き合いがありその後Ｔ君に憧れていた友人の女子高生を紹介し、その女子高生とＴ君は大学卒業後に結婚した。僕がまだ医学部の大学生だった頃に実家に帰省していたら、この女性が義母に促されて僕のところに挨拶に来たことがあった。ハンサムで女性にモテモテだったＴ君にふさわしい美しい女性だった。この夫婦は仕事で西ドイツにいる時に休暇でドライブ中に、一家４人中３人が死亡するという悲惨な事故に遭い、傷を負いながら幼子が一人が残った。その後、折に触れて彼の実家に焼香に行っているが、幼い頃からの自慢の息子を失った老父（母親はＴ君より先に亡くなっている）が可哀そうでならない。

いろいろな事が脳裏に浮かんできた懐かしくもありほろ苦い還暦同窓会だった。