四面楚歌
　

猪瀬都知事の５０００万円問題で都議会が紛糾している。この一連の事態を見ていると、本来与党であるはずの自民党と公明党がしゃかりきになって疑惑究明に臨んでいるのが不思議な気がする。 ある自民党の都議会議員はインタビューで「はっきり言って彼を嫌いだった」と公然と発言していた。以前から気になっていたが、猪瀬知事はかなり敵が多いというか、周囲はほとんど敵だらけなんじゃないだろうか。 以前の彼は石原都知事というある意味お釈迦様の掌の上で動き回っていれば良かったが、今はそうはいかなくなっている。また知事になってからもオリンピック招致という共通目標があったのでいろいろ不満があっても 都議会議員との軋轢が表面化することはなかったが、その目標もなくなった途端に現在の事態に陥っているようだ。

それは結局、猪瀬知事個人的な人格や性格が大きく影響していると思う。彼の場合は作家時代からターゲットを攻撃することでアイデンティティーを維持してきたようなところがあったから、窮地に陥ると叩かやすいということになるのだろう か。ただそういうキャラクターの評論家は他にも居るわけで、みんながそういう目に遭うかというとそうでもないと思う。これは結局彼のＥＱが低いことが原因になっていると思う。このＥＱとは分かり易く言えば、心の成熟指数とも言うべき概念で、自分や他人の気持ちを認識する力、感情をコントロールできる力、他人に共感する力、人間関係を処理できる力などが含まれる。ＩＱは「頭の知性」、ＥＱは「心の知性」とも言われたりするらしい。

このＥＱについてはいろいろな方面から説明もされ本も数多く出ているが、どうもイマイチしっかりと把握しにくい概念だ。ただＩＱが高いと頭が良くＥＱが高いとその人から受ける感じが良いくらいの連想しか浮かばない。 一般的な感じとして生まれついてのものなのかとも思うが、どうもそうではなくいろいろなトレーニングでＥＱも高くすることが出来るらしい。ただとんでもなく感じの悪い人が居る反面 初対面の時から感じの良い人間もいる。これはその人との相性も関係するが 生まれついての素因もあるんだろう。

と言うことで、 もともと知能の程度を表すＩＱとは違って、このＥＱとは人間的な感情の側面を測る指数であり、これが低いと敵が多くなり、逆に本来味方になるはずの人間が支えてくれないということになる。現在の知事がまさにそうで 都知事選史上最高の得票数で選ばれ 、またオリンピック招致の最大の功労者にもかかわらず、今では全く四面楚歌の状態だ。 もし彼がＥＱが高ければ、与党である自民党や公明党がこれ程攻撃してくるはずはなく、共産党など少数会派の追求を悠々と乗り越えていけたのだろうが、なにしろ与党が本気になって追及してくるので汗だくでの答弁になっている。

知事の答弁の時にスーツに流れ落ちる汗を見ていると、今までの自信たっぷりの彼の態度を見ているだけに気の毒な面もあるが、その彼がこれ程追いつめられるのはやはり相当ヤバいと自分で思っている 事を隠そうとしているからなのではないかと余計に疑惑が深くなる。これまでの記者会見を見ていても、あまりに間違えや言い直しが多すぎる。これはある一つの事実を元に説明するとあり得ないと思う。そうではなく何か事実を隠すために言い逃れをしているから、いろいろな方面から突っ込まれるとその度にいう事が違ってくるようになるのだろう。

つまり最初に５０００万円を借りたと言ったことが真実ではなく献金としてもらったのに、 徳洲会に捜査の手が伸びて慌てて一時的に借りた風を装ったので、その後取繕わなければならなくなり幾つもの可笑しなことが起こっていると考えたほうが自然だ。ニュースを見ていても今後も追及の手は伸びてきそうで、猪瀬氏は多分この議会の追及を乗り越えられずに辞任に追い込まれることになると思うが、 今回はやはり彼のＥＱの低さが致命的な要因になったのではないだろうか。