都知事とマスコミ

桝添東京都知事に対するマスコミや世論の攻撃は日に日に激しさを増してきて全く収束する気配が見えない中、７日には東京都議会が始まることとなった。初日は少々意外だったが、自民党や公明党など与党が結構激しい言葉で知事を攻撃していたことだった。本来、与党としては都知事選で現知事を担ぎ上げた経緯もあり舌鋒鋭くとはいかないと思っていたが、言葉だけを考えるとそうでもなかった。ただ今すぐに辞められると選挙の日程を考えると都合が悪いことなどから、議会でも辞任を要求するようなことはなかった。その点を取り上げてマスコミでは「まだ議会与党は本気ではない」とコメントしていたが、本当にそうだろうか？　私は日本のジャーナリズムは底が浅いと言わざるを得ないと思う。

そもそも桝添都知事が政界にデビューするきっかけになった時点から私は疑問点を感じていた。彼はいわゆる介護問題で政治的なデビューをしたのだが、毎週故郷の北九州市に飛行機で飛んで母親の介護に汗を流しているだとか、認知症に陥った母親を献身的に看ているので介護の専門家だとかマスコミは彼を精一杯持ち上げていた。また自宅に押しかけて毎朝ゴミ出しのビニール袋を出す光景を取材して、レポーターがそれに感心するコメントを発していた。

こういう表面的なイメージでマスコミは桝添氏は介護に本気で取り組んでいる真摯な政治家で、また家庭のことも奥さんにだけ任せるのではなく自分で率先してやっていく家庭人なのだとの人物像を創りだして応援してきた。そういう背景が彼をして都知事への階段を登らせていくことになったのだが、これらは単にマスコミが作りあげた全くの虚像であることが判明している。先日も介護を実際に担ってきた北九州市在住の彼の兄弟や姪からその虚像の正体が暴露されていたし、ゴミ出しもマスコミが居る時だけのパフォーマンスだったのが暴露されている。

また先日の２名の弁護士を伴った疑惑の説明会でもマスコミの能力の低さは際立っていた。そもそもこの辞め検の弁護士は第三者委員会でも何でもないのに、マスコミは初めから第三者委員会との扱いで応答していた。これは桝添氏が雇った弁護人であり、中立的な第三者ではないのは明白だったにも拘わらず一体どういう認識なのだろうか。検事時代に「マムシの善三」と呼ばれていたらしいこの辞め検はあまりにも酷かった。それは同じ辞め検の弁護士が指摘していたが、第三者の立場で調べるのなら最低当事者に当たって正否を確認しなければならないのにそれをしておらず、そのことを指摘された際には気色だって反論する態度だった。

この態度を見た視聴者はこの弁護士の態度は顧客の利益を第一に考えた顧問弁護士のスタンスであり、第三者のものではないことはすぐに分かったであろう。それをながながとこの弁護士は第三者だとの認識で質疑応答しているのは明らかに事前準備が不足していたといわざるを得ない。ちょっと考えればそれはすぐに分かる事で、弁護士はこの説明会を依頼人（桝添氏）から報酬を貰ってどうにか依頼人に有利になるようにしようとしたはずでそれを突き崩す準備を入念にする必要があったはずだった。それを怠っていたのであのような光景になったと思われる。

ただあの「マムシの善三」の態度は酷かった。真摯にマスコミに対応しようという姿勢は皆無で、少しでも都合の悪い質問が来ると素人でも分かるような言い逃れやはぐらかしに終始していた。それはテレビの画面を通してもはっきり分かるほどで、余程答えにくい質問だったんだなとわざわざ暴露したような印象だった。昔の彼を知っている弁護士が「あの強引な手法が彼の特徴でそれが彼の限界だったんでしょう」とコメントは出していた。そういう知識を事前に揃えているとまた違った質疑応答になった可能性もあり、その辺りは残念な感が残った。

結局、マスコミによって祭り上げられてマスコミによって引き摺り下ろされようとしている桝添氏だが、自腹は一銭でも払いたくない、公金は最大限使って豪遊したい！とのせこさが墓穴を掘った形になった今回の騒動だったのだろう。