アメリカ大統領選

来月８日、アメリカ大統領選挙が行われる。普段はアメリカの大統領が誰になろうとそれ程興味もなく単に一つのニュースとしてしか見てなかったが、今回の選挙はこれまでとは違ってかなり関心を持って 追いかけている。と言うのは、日本のこれからに影響が相当大きいと思うからだ。今回はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの戦いだが、クリントンが大統領になった場合には従来の日米関係とそれ程の違いはないと思われる。ただしトランプが万が一当選した場合には日本の安全保障を中心にして貿易などに関しても大問題が発生するだろうと思われる。

それはトランプの選挙中の発言だけを拾ってみてもすぐに分かる。「今後の政府方針はアメリカの利益を優先したアメリカ第一主義で行く」、「日本の防衛に手助けはしない」、「日本は自国で核兵器を作ればよい」、「日本はアメリカで車を大量に売ってアメリカの利益を奪っている」など従来の日米関係を大幅に変更する政策ばかり発言しているし、どう見ても日本に好意的な考えを持っているようには見えない。もしこれらをそのまま実行すると、中国の思うがままで尖閣諸島などあっという間に中国が乗り込んできて占領されることになると思う。しかも国防費も今でさえかなりの額になっているのにそれこそ 理不尽なな額にまで拠出を迫られるだろう。

彼の政策で最も問題なのは彼が世界や日本との関係を理解してなくてこういう発言をしていることだ。それは日本に関してだけでも無知からの発言であるのは明白だ。つまり日本は防衛に関してはアメリカに世界最大の巨額の支出をしているだけでなく、 沖縄を大揉めに揉めながらそれでも提供していてそれなりに大きな犠牲を払っている。こういう事は彼が万が一大統領になった場合はこの政策通りに実行されることはないだろうが、それでもこれほどの無知の上に立った大統領が核ミサイルのボタンを持っているのは非常に危険なことだ。

また経済に関しても かなり酷い認識しか持ち合わせてないようだ。そもそも日本車と言ってもそのかなりの部分はアメリカ現地生産であり、地域の雇用も税金もアメリカに対して恩恵は大きい。もしアメリカから日本車の工場が撤退したらそれこそ大変は社会不安が巻き起こるはずだ。 そういう基本的な経済構造さえ彼は理解しないで発言している。フィリピンのドゥテルテ大統領 と並んで暴言王と言われているが、この二人は本当に大統領にふさわしくない人格の持ち主だと思う。

現在の状況ではトランプ氏の人種差別発言や女性蔑視発言、セクハラなど選挙戦終盤になってマイナス要素はどんどん湧き上がってきている。従来の暴言など大統領としての不利な要素に加えてこういう人格さえ疑われがちな言動でさらに彼の支持率は下がりつつある。ＣＮＮなどのマスコミやワシントンポストなどの大新聞もほとんど反トランプ氏の論調を張っているようだ。そもそも大統領選挙に出てはいけない人間が間違って出てしまったのだろう。 賭けのオッズもトランプは下がり続けて遂にはまだ選挙は始まってもないのにクリントン勝利の支払いさえ起きているようだ。もうほとんど彼が選挙で選ばれる可能性はないといっても良い状況だろう。

ただトランプ氏にはどんなことがあっても彼に投票するというコアなファンが多いようなのでそれだけが唯一の望みだろう。日本にも木村太郎のようにトランプのアシストに力が入りすぎて、本来キャスターであるべきスタンスを大きく踏み外してトランプ応援団に終始している者もいる。彼は以前からトランプが９９％大統領になると発言していたが、クリントンがほぼ当確になった現時点でもいろいろな言い訳を探し出してまだトランプの当選を言い張っている。ここまでトランプの応援に全力を出していたら今更クリントンの優勢を認めることはできないのだろう。これまでキャスターとして冷静な彼にしては信じられない対応だが、彼もまた寄る年波には勝てないということかもしれない。

そういう訳で一時危惧したトランプ大統領の目はなくなったようなので一安心しているが、今回トランプが共和党の大統領候補までなったというのは現在のアメリカ社会にその大きなその要因があると思う。それはアメリカの中間層が後退しつつあって、もっと言えば白人の中間層の没落とその不満が鬱積していたのがその根本にあったと思う。特に高卒の白人層のトランプ支持率は驚異的に高いと言われている。彼らは自分たちの給料が安かったり職に就けないのは移民のせいにしがちでトランプの主張がピッタリくるのだろう。格差の驚異的な拡大と相まってアメリカの底辺の不満は何か大きな爆発を起こしそうなほど膨れ上がっているので、今回の選挙でクリントンが勝利してもその芽は残り続けるだろう。それがこの先心配だ。