忖度

最近、テレビの画面に頻繁に登場するニュースのなかで、森友幼稚園に関するものと金正男暗殺事件に関するものが飛びぬけて多いし興味を引く。一時は朴大統領に関するニュースが圧倒的だったが、それも大統領の弾劾罷免という結末に終わって潮が引くように収まっていって、現在はこの2つ の事件が主役になって茶の間を賑わしている状態だ。それにしてもこの二つの事件は登場人物も多彩で事件の様相もユニークなので多くの人達の興味を引くのだろう。

その中でも森友学園事件だがこれは出色だ。この事件については初めから官僚を巻き込んだ複雑でどす黒い事件になるだろうと思われた。と言うのも、その発端からして 摩訶不思議な状況だったからだ。ある市議が公園のための用地を探している時に、その土地を近畿財務局から９億円近い土地代を要求されて結局断念したのだった。それが小学校用地として売却されたのを耳にして一体いくらだったのかを調べようとしたら、なんと10件近くあった売却地のうちでそこだけ売却値段が記載されていなかった。これはおかしいと思って財務局に問い合わせたところ 周囲が結託して隠匿する様子なので問題化したという経緯だった。

ところがふたを開けたら９億近かった値段がなんと1億円くらいで売却されていた。そのうえ一億円くらいの助成金が出て 結局200万円くらいしか払ってないとのこと。しかもその小学校の名誉校長は安倍総理夫人の明恵さんが名前を連ねていた。これはただ事じゃないというので一気に政治問題化していった。この事件は調べれば調べるほど不思議なことが数多く出てくる。 これをすべて記載していくと一冊の本になってしまうかもしれない。

ただ全体を通して感じられるのはこの小学校の開校に合わせるように、役所などが良く言えば親切に悪く言えば権力者の顔を窺うような不自然な態度で認可などを急いで行っていることだ。これは 大阪府知事から中央の財務省の局長、近畿財務局の役人に至るまでこの小学校の開校のために 親切に骨を折っている。そこを追求されると様々な屁理屈を並べてこの学園のために有利な行為をしていないと言っているが、これは一般常識からして明らかに不自然だし不公平な認可などが 複数見られる。

おまけに名誉校長が総理大臣の夫人と来ればこれはもう小学生でも昭恵夫人の役割を容易に想像できる。 それなのにこのご婦人はマスコミに「なんで私はこんなに世間の注目を浴びるんでしょうか？」などとノー天気なコメントを発信している。夫婦そろって鈍感力が強いというか心臓に毛が生えているというか、ある意味政治家向きの資質があるのかもしれない。

そういう時に今治市の加計学園問題が浮上してきた。これは森友事件と酷似した問題でやはり明恵夫人が関連保育施設の名誉校長に収まっていて、学校用地がリースから無償譲渡へと不自然な買収が行われている。それに加えて理事長の加計孝太郎氏は安倍首相の40年来の親友で、それ以前にほかの学園が取得しようとしてどうしても許認可が下りなかった学校用地があっという間にこの学園が取得できている。これは昨日、国会で福島議員がこの問題を質問しただけで、安倍首相は質問封じともとれる恫喝気味の発言をしていたが、これはかえって首相自身が相当やばいと思っているとの印象を与えたと思う。ひょっとするとこの先安倍政権の命取りになる危険性も孕んだ大事件になっていくかもしれない。

それにしてもこの森友事件で登場する人物は上は総理から始まって明恵夫人、鴻池代議士、稲田防衛大臣、さらには財務局の局長、下は籠池理事長とその夫人（所謂おばはん）やその長男に至るまで揃いも揃ってキャラクターが立っている 。これほどのキャストを集めるのは凄腕のプロデューサーでも難しんじゃないだろうかと思うほどだ。また一般的な社会常識からしてもそれぞれ反応が 奇妙で、鈍感力も強いしまっとうな会話が成立し難いころがある。それで余計に世間の注目を集めるのだろうしテレビの視聴率も鰻登りだからどの局も先を争って報道する。

総理も今国会では予算委員会などでちょっとした答弁においてもキレまくっているが、やはりこの問題の重大性がプレッシャーになって追い詰められている感覚があるのだろうか。それとも彼本来の性格からすぐにキレる答弁になっているのか？　 ただこれらの事件は安倍首相も法を犯して便宜を図るような間抜けなことは多分してなくて、いわゆる「 役人の忖度」を利用して便宜を図ったのかもしれない。どちらにしろしばらくこの問題から目を離すことはできないと思わせるほど相当面白いニュースになってきたようだ。