トマホーク発射

先日、シリアが内乱中の反体制組織に対して化学兵器（サリン）を使用し幼児を含む民間人に多くの犠牲者が出る結果になった。これを受けてトランプ大統領がすぐさまシリアの軍事施設に対して巡航ミサイル：トマホークを５９発発射して軍施設を破壊した。これにはその決断の早さに世界中から驚きの声が湧き上がった。以前、オバマ大統領の時にやはりシリアは同じように化学兵器を使用したにもかかわらず、アメリカは非難声明を出しただけで実力行使はなかったので今回も同じような反応だろうと思われていたからだ。

しかしながら以前からアメリカは化学兵器の使用は超えてはならない一線 （レッドライン）だと声明は出していた。ただオバマ大統領の時は軍事行動を議会に諮ったが許可されずに非難声明だけに終わった経緯があった。今回は国連安保理に諮ってもロシアや中国の拒否権で国連軍が動くことは叶わず、またアメリカ議会も以前と同じような議決になるだろうからどちらにしろ軍事行動は出来なかっただろう。やるとすれば大統領が単独で動かなければ 実行できなかったのかもしれない。

ただしこれにはイラクの湾岸戦争のように大量破壊兵器があると思っていたら結果的になかったというような危険性もあるので要注意だ。これは言ってみれば、全然関係のない第三国があの国は気に入らないから と難癖をつけてミサイルをぶっ放してやれ！と言うようなとんでもない事態が起こらないとも限らないので余程注意しないといけない。アメリカの軍事行動の前には十分な証拠を明示して世界から納得を得てからしないといけないだろうが、これも当然ロシアや中国がすんなりと賛成するはずもないから簡単ではない。やはり今回はどこかの段階でアメリカ大統領が独断で決行するしかなかったのだろうか。

ここで少々話は変わるが、以前から疑問に思っていたことがある。それは化学兵器をこれ程までに通常兵器と区別する根拠だ。通常兵器なら今回のように住宅地を空爆して民間人を大勢殺してもそんなに強い非難の対象にはならない。そもそもアメリカは太平洋戦争末期には日本の住宅地をじゅうたん爆撃して、何万という単位で民間人を殺戮しているが、世界的な非難は湧き上がってない。それに反して化学兵器で はそれよりかなり少ない人数の殺害でも世界的な非難が起こって、場合によっては今回のアメリカのように直接関係のない国までもが報復のミサイル攻撃を行っても世界は容認する。

それほど通常爆弾と化学兵器を使用した際の反応は違ってくるのだが、同じ人間を爆弾で人体をバラバラにして殺すのと、化学兵器で体は見かけ上そのままで呼吸困難などで殺すのは残虐さと言う意味で差はあるのだろうか。確かに サリンなどの呼吸困難で死ぬのは苦しいしという面はあるが、さりとて爆弾でバラバラにされることが残酷でないとは言えないだろうしそれ程の違いは感じないのだが。これは国連などでも標準の 基準であり、きっぱりと区別されていることなので多分今後も変更されることはないのだろうが、化学兵器を禁止するなら大量に殺害できる大型の通常爆弾も禁止しないとならないように思う。核兵器はその殺害規模から後遺症の残酷さまでほかの兵器とは全く次元が違うので禁止されて当然だろうが、ほかの兵器についても人を殺害するという意味では悲惨であり、これらの使用を撤廃するような動きがジャーナリズムの世界からも起こらないのがなんだか不思議な気がする。

それにしても最近、シリア、北朝鮮など軍事衝突が引き起こされそうな情勢が強まってきていて、どちらもこのまま事態が進行するとアメリカとロシア、中国などが全面衝突する危険性があるのが懸念される。特に北朝鮮では戦争になった場合は核兵器が登場することになるので、当然日本も巻き添えを食う危険性が高まってくる。これは先日、北朝鮮も日本の米軍基地が核ミサイルのターゲットだと明言しているのでかなり深刻だ。トランプ大統領になってなんだかきな臭い世界情勢になって 行きつつあり、それは今後もさらに悪化していきそうな雰囲気が感じられるのだが・・・。