忖度政権

最近、安倍政権のダークサイドな側面が一気に表に現れているようだ。そもそも森友問題の時も明恵夫人と交友のある幼稚園経営者に便宜を図って権力の私的乱用が疑われて問題になったのだが、今回の加計学園の問題はそんなレベルではなく本来なら 政権が倒れるかどうかと言うほどの大問題になる事件だと思う。それはこの加計理事長が安倍首相の３０年来の友人であり、これまで５０年間認められなかった獣医学部の新設を国家戦略特区という首相直々の組織で 開校ありきでごり押しで進めてきたからだ。

そもそも特区と言うのは普通の法律では許されない状況をこの制度で特別扱いして認めるのだから、こ制度によって特別に利益を得る関係者が登場することになる。それだけにこの制度の運用には細心の注意が求められるし、「李下に冠を正さず」でこの制度のリーダーである首相と関係のある人間にこれを適応するとその関係性が疑われることになる。つまり首相がその強大な権限を利用して友人に特別扱いをしたと邪推されやすい。

それだけに疑われることは控えなければならないのに、こともあろうかこの首相は親友が最も望んでいた平成３０年４月開校にも様々な優遇処置を与えて役所の認可も無理押ししてまで開校に持って行こうとした 証拠が出てきつつある。現在、それらは 直接の関係者である当時の文部事務次官が反旗を翻して様々な証言をしているが、それらも国会に呼ぶこともなく無視を決め込もうとしている。前事務次官本人が国会に証人として喚問されるのであれば行くと表明しているのにもかかわらず、内閣としては絶対に呼びたくないようだ。それだけでもどちらが嘘を言っているのか判るというものだ。

それにしてもこの一強多弱と言われる強い政権はその強さに任せて権力を私物化して好き放題なことをしている。森友学園問題もそうだが、この加計学園問題。さらには山口敬之氏の準強姦事件もそうだ。これは元ＴＢＳ記者の山口敬之氏が就職を相談に来た女性 に薬物を飲ませて強姦したと訴えられた事件だ。これはかなり奇妙な展開を示した事件で、所轄の警察署も初め被害届を受理することに消極的だったのが、女性が複数の証拠を提示した後で受理し逮捕することになった 。しかし逮捕直前に 警視庁刑事部長からの指示で逮捕が取りやめになり、所轄から警視庁がこの事件を取り上げて挙句の果て起訴しないことに持ち込んだ。

この一連の経緯を指揮した部長中村格氏が菅官房長官の元秘書官で、先日「捜査は適正に遂行され起訴するだけの証拠はなく終結した」との発言をしている。これが現在放送中のＴＢＳドラマと酷似しているところが興味深いが、こんなことはドラマの世界だけにしてほしいものだ。報道では山口敬之氏が親交のある菅官房長官に泣きついて 、そこからこの 刑事部長に指示して強姦事件を起訴なしに持って行ったというその筋の意見もあるが、果たして真相はどうなのか。

それにしても強い政権は外交を考えると必要なのだろうが、ここまで強くなるとその弊害のほうが目立ってきて本当にこんな政権で良いのか疑問に思えてくる。それも安倍首相のように 、臆面もなく友人を優遇するような首相の資質に問題がある人物がトップに立つと、社会中が「巨大な忖度の塊り」になってしまい、ＮＨＫを含めてテレビの報道でも硬派のキャスターを降板させたりであまりに酷すぎる。 数年前に報道ステーションのキャスターを降板させたのも件の刑事部長が菅官房長官の秘書官だったころの暴挙だ。

この政権になってからマスコミも以前なら問題化する事件でも押し黙ることが 複数あるようだ。山口氏のケースでも前日に各局のキャスターが驚愕の事件だと言っていたのが、その翌日にはすべてのテレビ局がまったくこの事件を報道しないなんてどうかしていると思う。官邸から相当なプレッシャーをかけられたのだろう が、なんとも情けないジャーナリズムの世界になったものだ。特に読売新聞は官邸の御用新聞に成り下がって官邸から出された前川氏の暴露記事を恥ずかしさもなく載せている。

現在、国連特別報告者のカナタチ氏からも指摘されているように、日本の情報公開の程度は世界１８０か国中で７２番目という状態で先進国中では考えられないほど劣悪で、共謀罪については世界ペンクラブの会長からも非難されている。政権はすべて無視を決め込んでいるが。国民も我が国はこの安倍政権のせいでそういう状態になってしまったのだと認識することが重要だ。今朝の朝日新聞に書かれているように、これは日本が 世界中の非難を無視して国際連盟を脱退した満州事変の前夜に酷似している状態だとの危惧を持つことが必要だろう。