平昌オリンピック

開催前は準備不足や資金難でいろいろと危ぶまれる面も多かった平昌オリンピックだが、蓋を開けてみると日本人選手の大活躍もあって少なくとも日本では大盛り上がりの様相となっている。それは 今回がこれまでのオリンピックより獲得メダル数 も多いし、また羽生選手のフィギアスケートや小平選手のスピードスケートは金メダルを獲得した上にここに至るまでのストーリーが小説のように上手く出来上がっていて、誰もが 感情移入しやすいような状況となっているからだろうか。

羽生選手は大会前に大怪我をして後で分かったのだが、ほとんど出場さえ危惧されるほどだったという。そこを乗り越えて 多数のライバルを押しのけての金メダル獲得だから大勢の人が感動しないはずはない。特に前日のＳＰではスペインのフェルナンデス選手の出来栄えが素晴らしくて、私としてはフェルナンデス選手のほうが出来栄えからして高得点を獲得しても不思議ではないのではないかと思うほどだった。だからフリーの演技では逆転される可能性が高いのではないかとひやひやだった。

また小平選手はこれまでオリンピックの前２大会では表彰台にさえ上ることが出来ずに、３歳年下の韓国イ・サンファ選手が連続優勝した中で今回はサンファ選手を破っての優勝だった。この二人はお互いに親友同士でこれまでも様々に相手の面倒を見てきた間柄だったようだ。サンファ 選手は韓国のスーパースターで、２０才の時にバンクーバー、２４才の時にはソチオリンピックで金メダルを連続獲得して今回も銀メダルを獲得している。今回も小平選手が居なかったら金メダルだったと思われる。

そもそも日本人は体格的に世界的に見て劣る面が強いし、アジアの中でも中国や韓国の選手と比べると低身長で筋肉・骨格も貧弱だ。つまり競技スポーツにはハンディがあるというか向いてない人種だと言える。それはアメリカのメジャーリーグやＮＢＡをみても中国や韓国の選手は２メートル近い大型のパワーあふれる選手が多いのに対し、日本人選手はメジャーのイチローやＮＢＡの田臥のように小さくて敏捷性で勝負している選手がほとんどだ。また日本国内でも世界に誇るような大記録を残した野球人はほとんどこれらの国々の人だ。世界のホームラン王である王選手は台湾系、４００勝投手金田は韓国系、日本球界で 通算ヒット数の記録を持っている張本も韓国系で、彼らの体つきも同世代の日本人と比べるとかなり骨格が強固で目立っていた。 今回、カーリングを見ていても日本人と欧米の選手の体格は大人と小学生くらいの違いがあった。

そういうハンディを考えると、日本人がスポーツで世界一になるのには人並外れた訓練と肉体改造をしないと互角の勝負は難しい。欧米の選手だったら生まれついて素質のある選手がそれ相応の鍛錬をすれば極限までの肉体改造などは必要ないと思う。以前、王選手がアメリカに招かれてハンク・アーロン選手などとエキシビションでホームラン競争をした時のことを回想していたが、「日本人選手は自分を含めて引退するとすぐに パワーが落ちで打球が飛ばなくなるのに対して、アメリカのメジャーの選手は引退してかなり時間がたって運動もしてなくても、ボールを打つとかなりの距離が出て当たりが良いとホームランも出る。これは生まれ持っての骨格や筋力が違うからだろう」と言っていた。

こういう背景があるだけにオリンピックなどの国際大会で欧米やアフリカ系選手と競争して成績を残すのは至難の業だと思う。それだけに羽生選手や小平選手の偉業は一層の価値があり、また より一層国民全体の感動を呼び起こすのだろう。今回 、特に小平選手はこれまで日本人選手が誰も成し遂げられなかったスピードスケート５００メートルと言うスプリントが求められる種目での優勝だから驚いた。競技に出る選手を見ていても欧米系の選手は手足も長くまたかなり太くて小平選手はまるで 違う体形だった。陸上競技のように本来なら小平選手がいくら肉体改造をしても適わない相手だが、可能な限りの肉体改造と彼女独特の様々な創意工夫でこの種目 に必要とされるスプリントを鍛えていったのだろう。まことに頭が下がる思いだ。

まだオリンピックも半分を残していて興味をそそられる競技も多数ある。４年に一回しか巡ってこないオリンピックなのでこれからの後半の種目も精いっぱい楽しみたいと思う。