日本ボクシング連盟の闇

最近、これほど驚いたことはないというほどわが耳を疑うくらい酷い不祥事が報道されている。日本ボクシング連盟の会長が巻き起こしている一連の騒動がそれで、数々の出来事がいちいち最近ではあまりお目にかからない程の時代錯誤というか前近代的な 問題を含んでいる。そのほとんどが暴力を背景にした威圧や脅迫じみた事件で 、よくもまあこれまで社会的に表面化しなかったものだと感心するほどだ。その一つ一つが会長の辞任に繋がるほどの深刻さを含んでいる。

まず最初に報道されたのは所謂「奈良判定」で会長の出身地である奈良の選手を身内びいきの判定では奈良の選手に勝てないというもの。この際も会長自身は否定しているし、実際会長が直接審判に強要したわけではない かもしれない。ただし奈良の選手に負けを付けた審判は後から審判資格をはく奪されたり、恫喝ないし審判を外して会場の隅に座らせたりとありとあらゆる嫌味な仕打ちをして、またそれを周囲の審判に見せつけることをしていたようだ。こうして直接言わなくても忖度が働くように仕向ける卑怯な手法を取っている。

またグローブなどのボクシング用品を自分の息のかかった会社に独占販売させて、その収益を自分の身内で独占する。これには自分の孫などを利用している。これは総会などで質問が出た時のビデオがあるが、「どうして会長が商売をしたらダメなのか？そんな法律でも日本にはあるのか？」と恫喝して質問者の発言を封じている。一事が万事この様子で、強面の外見とドスの利いた強弁で自分に不利な発言を出さないように差し向けている。

今までこの二つが一番報道されているようだが、私が思うのは実際に今後問題になるのは暴力関係の事件だろう。とは言っても、彼の問題はほとんど暴力の威を借りた事件なのだが、直接暴力を使った事件が会長という立場からしたら致命的な 内容を備えていると思う。それは暴力団関係者との交際やそれに付随する様々な問題で、今わかっている大きな問題だけでも３つある。ひとつはそもそも彼は二十歳前から５０年間にわたって元暴力団組長との永い交際があり、この交際自体が大問題だ。しかもそれはこの両者が認めている。会長本人はこの交際自体は問題ないと放言しているがそんなことはなく、この時代にこれ深く反社会的勢力と付き合ってきたというのはそれだけでアウトだろう。 そもそも彼の場合は暴力団と交際があるというレベルでなく、暴力団が連盟の会長に就いたと言ったほうが適切なほど外見や言動が暴力団のそれが。

次に８年前の会長選挙の際に対立候補を暴力団を使って殴打し辞退させ自分が会長に無投票で座ったことだ。これは当の対立候補が当時顧問弁護士に相談したのだが、この弁護士に問題化するのを止められて有耶無耶になっている。その弁護士が今の副会長兼専務理事だから何をか言わんやだ。この弁護士は数々の不正を働いてきた会長を法律の面から支えていると言える。先日のインターハイでは会長批判の発言をした開催地の幹部を腰ぎんちゃく宜しく非難していた。

また最近の話だが、自分の手下のようにしている理事が脳梗塞を起こした時には勘違いして高校ボクシングの役員に暴力をふるっている。これもほかの事件と似ているが、手下に手を出させて本人は 直接には手を出していないが、これほど類似の事件が続くと言い逃れは難しいだろう。これも数日前からニュースになり始めたので今後大きな問題になりそうだ。このようにほとんどの問題は暴力団の威を借りた強面の発言や暴力で周囲を従わせてきたのだが、それにただ羊のように従ってきた周囲も悪いと思う。この連盟は理事が３０人いてそのほとんどは会長の言いなりだという。その中には件の弁護士のようにこの連盟の中枢に居てそれを支えてきたメンバーも居る。彼などはその過程で甘い汁を存分に吸ってきたわけだ。

この事件報道を見ていて強く感じるのは、この２１世紀の時代にオリンピックに関係するスポーツ団体でまだこんな時代遅れの組織が残っていたということだ。こんなことはもう数十年前の撲滅されていたはずだと思っていたが、実際はまだ複数の分野で古い体質が残っていたのかもしれない。普段、反社会組織はどんどん消耗していって構成員の数も相当減っていることが報道されている。それなのに最も近代化されていると思われていた オリンピック関連の分野でこんな時代遅れの組織がシーラカンスのように残っていたとは驚きだ。 今回の件はあまりに酷すぎて早晩この会長は辞職に追い込まれるだろうが、会長だけでなく腰ぎんちゃくも一掃してオリンピックにふさわしいクリーンな組織に生まれ変わってほしいものだ。